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お月さまとお星さま

作者: 雉白書屋

 空に浮かぶお月さまは、みんなにとってアイドルであり、またお母さんのような存在でした。

 暗くてこわーい夜も、空を見上げてその光を見ると、心がホッとして眠たくなってくるのです。「綺麗だなぁ」「まだまだ見ていたいよー」という子もやがて、うとうと、むにゃむにゃ、ぐっすり……。

 お月さまは毎晩、自分を見上げる子たちを見守り続けているのです。

 たまに、その人気にやきもちをやいた雲さんが意地悪しちゃいますけどね。でも、そんな時も、お月さまは変わらず微笑み続けるのでした。


 しかし、ある夜のことでした。今夜もお月さまに挨拶をしようと、夜空を見上げると、おやおや、あれれ? お月さまの近くに小さな、でも他のお星さまよりもちょっと大きな、まーるい光があるではありませんか。

「わぁ、綺麗!」と、みんなは大はしゃぎ。お月さまも、妹ができたことを喜んでいるかのように、より一層輝いていました。

 ……でも、そのお星さまは妹などではなかったのです。

 そのお星さまは、まるでお月さまに追いつこうとするかのように、どんどん大きくなっていったのです。

 そう、そのお星さまはお月さまの妹ではなく、ライバルだったのです。

 そのことに気づいた地上のみんなはまた大はしゃぎしました。「わあ、もうあんなに大きくなったよ」「お月さまよりも大きくなっちゃうのかなぁ?」

 地上はわいわいがやがやと騒ぎ、空に浮かぶ他のお星さまも、きゃーきゃー囃し立てました。

 でも、お月さまの態度は変わりませんでした。堂々と明るく、みんなに微笑み続けたのです。

 やがて、そのお星さまはお月さまよりも大きくなりました。

 みんなはすっかりそのお星さまに夢中になって、もう誰もお月さまのことを気にしていません。でも、お月さまはそのお星さまに対抗して、もっともっと大きくなったり、輝こうとはしませんでした。

 お月さまのそのいつもと変わらない態度に、お星さまはむっとして言いました。『ほらほら、どうだい? お月さま。わたしはもうこんなに大きくなって、光もすごいだろう? もう地上の誰もあんたのことなんて見ていないよ。悔しいだろう? 負けを認めて、ごめんなさいしたら?』


 お月さまはこう答えました。


『いいの。だって、みんな死ぬから』


 そうです。そのお星さまは、自分が目立ちたいばかりに地上に近づきすぎてしまったのです。

 夜空を割るような轟音は、逃げ惑うみんなの悲鳴と地響きを掻き消し、お星さまは祈りも嘆きもその恐怖もすべて覆ってしまったのでした。

 こうして、彼ら恐竜たちは滅んだのです。


 やがて、地上を覆う煙が晴れ、再びお月さまを見上げる者たちが現れ始めました。そして、憧れからか、その者たちはお月さまの真似をし始め、地上は夜でも光に溢れるようになりました。

 そして、それにむっとしたお月さまは、再び宇宙の誰かにこう語りかけるのでした。


『ねえ、誰か、あたしよりも輝ける? ま、無理だよねぇ……』

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