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転生したらトカゲだった~進化を重ねて最強のドラゴンになれ~  作者: ギッシー
第2章 北の山脈編

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71.北の山脈編エピローグ

(フェリシアside)



 アテナたちが去り、山の神とその眷属も山へ帰り、誰もいなくなった町には私と冒険者三人組だけが残りました。

 アテナ……私の父を殺したと思えば悪の薬師を倒し町を解放するなんて、貴方は何を考えているの……。


「行っちまったなアテナ姉さん……それで、これからどうすんだフェリシアさん?」

「うむ、まだアテナ姉さんを追うのですかな?」


 アテナの行動について考えていると、アランさんとダンカンさんから質問がきました。

 そうですね。今はアテナの事よりもこれからについて考えるべきかもしれません。


「数日もすれば聖国の部隊が到着します。それまでここで待ちましょう。休める場所があればいいのですが」


 周囲は見渡す限り破壊された建物で溢れています。吹雪が止んだとはいえ、ここは北の大地、まだまだ凍えるような寒さです。ステータスの高い私や冒険に慣れた三人組なら大丈夫ですが、できればゆっくり休みたいものです。雨風を防げないのは少し困りますね……。


「みんなー! ここにまだ壊れてない家があるよ! ここで休ませてもらおうよ!」


 どこで休もうか悩んでいると、いつの間にかいなくなっていたマイさんが遠くで手を振りながらこちらに呼びかけてきました。

 もう休める場所を確保しているなんて、さすが旅慣れた冒険者ですね。冒険初心者の私ではこうはいきません。力はなくとも自分にできる最善を尽くす。彼らは一人前の冒険者ですね。

 こうして宿を確保した私たちは夜を明かしました。


 翌日の昼、複数の強い気配がこちらに近づいているのを察知しました。


「何だありゃー!」

「大きな鳥がいっぱいいるよ!」

「うむ、その鳥にそれぞれ兵士が乗っているな」


 警戒しながら外へ出た私たちが見た物は、十を超える大きな白い鳥の一団です。そして、大空を舞う怪鳥の上には、白い鎧に身を包んだ屈強な兵士が乗っていました。


「白い怪鳥に白鎧の兵士、まさか……」

「何か知ってるのフェリシアさん?」

「ええ、噂に聞く聖国の特殊部隊と一致します。私の増援にきた部隊でしょう」


 マイさんが知らないのも無理はありません。私たちの住む王国と聖国は距離があるので、情報があまり入ってこないのですから。


「数日かかるって話だったが、あんな鳥に乗ってんなら納得だぜ」

「うむ。兵士はもちろん、あの鳥も強そうだ」

「もちろん強いですよ。あの怪鳥はB-ランクの魔物〖ヴァイスフーン〗です。恐らく乗っている兵より強いでしょう」

「あれが全部B-ランクだぁッ! マジかよ……聖国の特殊部隊ヤバすぎだろ……」


 アランさんが驚くのも当然です。B-ランクと言えば、私たちを苦しめたケクロプスよりも高ランクの魔物です。それが隊列をなして近づいてくるのですから……。

 呆然と空を見上げていると、聖国の部隊は降下を始め、驚く私たちの前に着陸しました。そして、一人だけ豪華な意匠の鎧を纏った男性が怪鳥から降り、ゆっくりとこちらに歩いてきました。

 あの人は強そうですね。私と同じくらいの実力がありそうです。


「貴方が聖女フェリシア様ですかな? 私は聖国所属の特殊部隊、〖白磁〗の隊長を務めるシネレウスと申します」

「はい、私が聖女となりましたフェリシア・ブルーホワイトです。この度は遠い聖国からの増援感謝いたします。ですが……」


 私は噂のドラゴンがこの地を去った事、悪の薬師が住民をアンデッド変え町を壊滅させた事など、今までの経緯を説明しました。

 話しを聞いたシネレウスさんの表情は変わりませんが、すでに事件は終わっています。せっかく増援にきていただいたのに、内心どう思っているか……。


「我らの一番の目的はフェリシア様を聖国まで無事に送り届ける事。到着が遅れてしまい申し訳ございません。して、そこの者らは?」


 シネレウスさんは冒険者三人組を見て訝し気な顔をしています。


「ねえ、何かあのおじさん私たちの事見てない?」

「うむ、確実に見られているな」

「俺らはフェリシアさんの護衛を務める冒険者だ。もちろん一緒について行くからよろしくな」

「お、おじさんか……若者から見れば私もおじさんになってしまうのか……。しかし、無関係の者は連れて行けぬぞ」


 皆さんの失礼な発言に顔を顰めるシネレウスさんが不機嫌そうに答えました。

 冒険者三人組は「ここまできてそりゃねえぜ!」「私たち役に立つよ!」「うむ、我らを見縊っているな」と、それぞれ納得できない様子で不平を口にします。


「ダメですよ皆さん。例え思ったとしても、言っていい事と悪い事の区別はつけなければいけません。それが処世術という物です」

「う~ん、確かにおじさんって言ったのは悪かったですごめんなさい。でも、私たちはアテナ姉さんに頼まれたんだから、フェリシアさんにずっとついていくよ!」

「そうだぜ!」

「うむ」


 どうやら皆さんにわかってもらえたようです。それなら、私もできるだけ協力しましょう。


「彼らは私の友人兼護衛を務める冒険者たちです。一緒に聖国へ連れていけないでしょうか?」

「……友人ですか、確かに知り合いもいない地に一人では心細いかもしれませぬな。承知しました。彼らも連れていきましょう」

「心遣い感謝いたします」


 私の気持ちが伝わったのか、シネレウスさんの表情が柔らかくなり、三人の同行を認めてもらえました。


「天下の聖女様に友達認定してもらえたぜ」

「やった! 嬉しいね!」

「うむ。我ら付き合いは短いが、濃い時間を共にしてきたからな」


 私の言葉に三人とも喜んでいます。

 そうですね。初めは足手纏いと思っていた三人ですが、今では大切な仲間だと思っています。これからも私を支えてほしいです。


「話は纏まりましたな。皆さんヴァイスフーンに乗ってください。出発しますぞ」

「よっしゃ聖国へ出発だー!」

「王国から出た事ないからワクワクするね!」

「初の国外であるな」


 本当に元気のいい人たちですね。でも、そこが皆さんの素敵な長所です。ポジティブとネガティブは伝染すると言います。いつも皆さんの元気に私の心は救われているのですから。

 こうして私たちは聖国へ向けて飛び立ちました。






(アテナside)



 北の山脈麓の町を飛び立った私たちは、事件を解決して清々しい気持ちで空を飛んでいた。

 まぁ、ユナは生まれ故郷が滅んで近しい人たちが亡くなったわけだし、やり切って清々しいのは私だけかもね。

 やれるだけの事はやったつもりだけど、結果はついてこなかった。謝らないとなぁ。


『ごめんなさいユナ。貴方のお爺ちゃんと町を護れなかったわ』

「そんな事ない。お爺ちゃんと町のみんなの事は悲しいけど、アテナ師匠のせいじゃないよ。アテナ師匠は関係ない町のために、体を張って勇敢に戦ってくれたんだもん。寧ろお礼を言わなきゃだよ。ありがとうアテナ師匠」


 ユナは真剣な眼差しで私を見詰めて言い切る。その瞳に嘘偽りは微塵も含まれていなそうだ。

 くぅーッ! 真っ直ぐな言葉が心に沁みるわーッ! 私の頑張りは無駄じゃなかったんだ!


『ありがとうユナ。貴方の事は私が責任持って育てるからね』


 もうユナに肉親はいない。これからは私が家族になって支えてやろうじゃないか。

 私が父親兼母親でギン爺がペット枠。うん、いけるな。


【称号スキル〖町の救世主LV3〗が〖町の救世主LV7〗に上がりました】


 おっ、〖町の救世主〗のLVが上がったぞ。今回は町が滅んでるし、上がらないと思ってたけど救えた判定になったみたい。

 ちょっと甘くない? 判定ガバガバか? 私は助かるからいいけどね。


『それで主様、次はどこへ向かうのですか?』


 思考に耽る私にギン爺が問いかける。

 次の行き先か、どうしよっか? 


『そうねぇ……北国で温泉は堪能したし、次は南に行きましょうか』

「南に行くの? ユナ麓の町を出た事ないから楽しみー! 暖かい土地ってどんな感じかなー!」


 そっか、ユナはこの北国から出た事がないんだ。反応が初々しくて可愛いわ。良いリアクションを見せてくれそうだし、これからは色んな景色を見せてあげたいわね。


『そんじゃあ行くわよ! 南に向かってレッツゴー!』

「おーッ!」

『はいですじゃ主様!』


 新しい仲間を迎え、フェリシアとの関係も少しは良くなった気がする。今回は前よりずっと気持ちよく旅立てるわ。新しい土地にはどんな出会いが待ってるんだろ。楽しみー!

 こうして北の山脈での冒険は終わり、私たちは新たな土地へと旅立つのだった。

第二部完です。

お読みいただきありがとうございます。面白いと思っていただけたら


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三部はまだ全く書いていないので未定です。今年中に投稿開始できればと思っております。

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