64.ソーマ②
『くぅ……なんじゃこの手は、身動きできませんぞ主様……!』
地面から生える数十本の手がギン爺の手足をがっちりと掴み、動く事もできないようだ。
そうか〖亡者の手〗は相手の動きを封じる魔法だ! 不味いぞ……こいつ超火力の攻撃に加えて、搦手まで使ってくるのかよ!
「お仲間一人だけでは寂しいでしょう。すぐに貴方の動きも封じてあげます。〖亡者の手〗」
ギン爺の動きを封じて気をよくしたソーマは私に向かって〖亡者の手〗を発動してきた。
〖亡者の手〗は地面から複数の手を生やす魔法だろ? 空中にいる私にどうしようってんだ?
なんて油断していたら、空中から複数の手が現れ腕と足を掴む。そして、残った手が私の首まで掴んできた。
くそっ、動けない……って、ちょっと待て! 首はヤバいだろ! 拘束するだけじゃなく、首絞めなんてエグい攻撃までやってくるのかよ! やらせるかっての!
私は全身に力を込め、フルパワーで掴んでいる手を引きちぎり脱出した。
『今助けるわギン爺! 〖真空斬〗!』
「そうはさせませんよ!」
ギン爺に当たらないギリギリの位置に〖真空斬〗を放つ。私の放った〖真空斬〗はギン爺を掴んでいた手を切り裂いたが、その隙をついて距離を詰めてきたソーマのパンチの直撃を受けて吹き飛ばされてしまった。
『大丈夫ですか主様! 〖癒しの水〗!』
『ありがとうギン爺』
吹き飛ばされた私を近くにいたギン爺が回復してくれた。
痛ぁぁッ! くそっ、ワンパンでHPが半分まで削られたぞ。なんちゅう攻撃力してんのよ。でも、飛ばされた先がギン爺の近くなのはラッキーだったわ。
『ワシこそ助けてもらいありがとうですじゃ主様。しかし、あの巨人怖ろしい強さですな。ケクロプスの比ではありませんぞ』
『そうね。間違いなく今までで最強の相手だわ……』
確かにケクロプスは強かった。でも、あの頃はLVが低かったからね。今なら大した相手じゃない。ツララの方がよっぽど強かったくらいだ。ソーマのステータスはそのツララと同じ魔力特化タイプ。だけど、〖ネクロマンシー〗による合体で他のステータスも私より高いんだよね。
わかっちゃいたが強いぞこいつ……考えるのが嫌になるくらいの戦力差だわ。でも、チャンスは必ずくる。いや、搦手も使える〖死霊魔法〗の使い手に待ってるだけじゃ分が悪い。こっちから動いてチャンスを作り出さなきゃ!
ソーマの防御力を破るには強い攻撃を当てる必要がある。今私たちにできる最強の攻撃はギン爺との協力技〖ファイアバレット〗だ。
でも、真っ直ぐ飛んで行く〖ファイアバレット〗じゃ撃ち落とされる可能性が高い。そうなったらいくら〖金剛〗で防御力を上げているとはいえ、ギン爺が耐えられない可能性がある。どうする、何か策は……そうだ!!
『ギン爺、貴方LVアップで新スキルを取得したって言ってたわよね。どんなスキルなの?』
この策が成功するかは運否天賦だ。ギン爺が取得した新スキルに賭ける!
『まだ話していませんでしたな。ワシが取得したのは〖覚醒〗というスキルですじゃ』
へー〖覚醒〗か、まるで主人公が覚えそうなスキルじゃない。って、あんたの主人は私でしょうが! どんな効果なんだ?
【通常スキル〖覚醒〗とは、一定時間自分にバフをかけるスキルです。また、自身にかけられたデバフと状態異常も一定時間なくなりますが、次回使用までクールタイムが必要になります】
なるほど、自己強化とデバフ解除ね。〖覚醒〗は言い過ぎだと思うけど、状態異常までなくなるなんて便利なスキルじゃない。でも〖覚醒〗は言い過ぎなんじゃないか? バフの量にもよるが、名前負けしてる感があるぞ……。
いや、まてよ。状態異常がなくなるって事は、ギン爺の〖老化〗も解除されるんじゃないか? 確か〖老化〗は全ステータスを半減させるとんでもないデバフだった。それがなくなれば……。
『いける……いけるわよギン爺!』
『なんと! ワシ自身試していないのでわからぬスキル効果を知るとは……主様の〖鑑定〗はスキル名を知るだけで効果まで理解できるのですか? 普通はそこまで見えるものではないですぞ』
そうなの? 他の〖鑑定〗使いには天の声の姉さんは説明してくれないのか? それか〖鑑定〗LVによる効果の違いかもしれないな。
『して、〖覚醒〗は使えそうなのですな?』
『ええ、まるで貴方のためにあるようなスキルよ! このスキルならソーマにも通用しそうだわ。やるわよギン爺、一緒に巨人討伐としゃれこもうじゃない!』
『はいですじゃ主様!』
私の思った通りにいけば上手くいけばソーマを倒しきれるかもしれない。ギン爺の新スキルで勝機が見えてきたぞ!




