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転生したらトカゲだった~進化を重ねて最強のドラゴンになれ~  作者: ギッシー
第2章 北の山脈編

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55.山の神

 神の眷属ツララと戦闘になった私たちは、眷属を倒すわけにもいかず撤退を余儀なくされた。敵意むき出しだったツララは以外にも追ってこず、すんなりと撤退する事ができた。

 まぁ、ツララは素早さのステータスが私よりも低かったし、例え追われても逃げ切る自信はあったけどね。これは強がりじゃない。ないったらない。純然たる事実である。


『それで主様、眷属殿の呪いを解く方法を探すのですか?』

『いや、このまま山頂を目指すわ。主人である山の神なら何か知ってるかもしれないしね』

『そうですな。あのままでは眷属殿があまりに忍びない。我らで呪いを解けるなら解放してやりたいですな』


 そうなんだよね。ツララだって好きで呪われてるわけじゃない。自我が失ってさえあの場を護る使命を忘れていないんだ。

 これは想像だけど、山の神に与えられた使命に対する想いがそうさせているんだと思う。そんな一途な女が自分の自我もない状態になってるなんて私は許せない。絶対に解呪してやりたいよ。


『主様、山頂が見えてきましたぞ』

『いよいよ山の神とご対面ね。もしツララの現状を知ってて放置してるってんなら、私が一発殴ってやるわ』

『主様、我らは冬を終わらせる陳情にいくのですから、なるべく穏便にお願いしますぞ……』

『何言ってるのよギン爺、拳が何のためにあると思ってるの? ぶん殴るためにあるのよ?』

『ホッホッホッ、さすが我が主様、豪胆でいらっしゃる』


 ちょっと過激な発言だったのに笑い話にできるなんてギン爺こそさすがだわ。野生で生き抜いてきた歴戦の魔物の価値観だね。

 さて、いよいよ山頂に到着だ。山の神とご対面よ!


 ついに到着した山頂は、植物が何も生えていない、見晴らしのいいまっさらな場所だった。

 ここが山頂だよね? 何にもないじゃない。山の神はどこにいるのよ?


『主様、あそこを見てくだされ』

『うん、あれは怪しいわね』


 ギン爺の示す方を見ると、平らな雪原にポッコリ盛り上がっている場所があった。

 あれってかまくら? って事はもしかして、あそこが山の神の住処なのか? 山頂には他に何もない、とにかく行ってみよう。


 かまくらに近づくと、遠くからではわからなかった意匠を凝らした装飾が施されていた。そして、中から神の声(仮)と似た神聖な気配を感じる。

 神の声(仮)の強大な力の気配と似てるけど違う、静かで荘厳な雰囲気がするわ。これは間違いなくいるわね。でも入口がないな。

 様子見で周囲を一周してみるが、かまくらの入口はない。完全に封鎖されているようだ。

 おいおい、入口がないやんけ! どうやって中に入るんだ?


『むぅ、これでは中に入れませんな』

『フッフッフッ、自慢の年の功でもわからないようねギン爺。かまくらってのは雪でできてるのよ? こういうのはね、炎で溶かすのよ!』


 私は大きく息を吸い込み、全力の〖ファイアブレス〗を放つ。炎の熱で固められたかまくらの表面が少しずつ溶けていく。


「あっつーいッ! ちょっと貴方たち! わちきの家に何してくれるでありんすか!」


 一度目の〖ファイアブレス〗が終わり、もう一度放とうと息を吸い込んだ時、突然かまくらに穴が開き、中から二十歳くらいの若い女性が現れた。家を溶かされた女性は頬をプクッと膨らませた怒り顔をしている。

 長いピンク色の髪、間違った花魁のように肩まではだけた和服を着こなす派手な美人だ。この人が山の神なのか?


『家を溶かしちゃってごめんなさい。貴方が山の神様なの?』

「ひぃッ! おっきいドラゴンに亀! 確かにわちきが山の神だけど……なんの用でありんす?」


 勢いよく飛び出してきた山の神だったが、私とギン爺を見た途端口籠もり出した。

 この神様急に元気がなくなったな。派手な見た目なのに人見知りなのか?


『急に押しかけてごめんなさい。私たちは長すぎる冬を終わらせてもらうためにやってきたの。山の神である貴方ならできるのよね?』

「冬を終わらせる? ごめんなんし、今はできんせん」


 山の神は申し訳なさそうにそう述べた。

 やらないじゃなくてできない? 何か理由があるのか?


『できないってどうしてなの? 麓の町ではみんな困ってるのよ』

「実は……わちきの眷属が行方不明になってるのが心配なんす。そのせいで力が不安定になってて……。わちきの力は精神状態に左右されやすいから、それが原因で冬を止められなくなってるでありんす……」


 眷属が行方不明? それってツララの事だよね? そういやツララも同じような言葉遣いしてたな。山の神の影響だったのか。


『貴方の眷属ってツララの事? ここまでくる途中に会ったわよ。迎えに行けばいいじゃない』

「ツララを見たでありんすか! あの子はどこで何をしてるんす! わちきが迎えに……ダメでありんす。外は怖うござりんす……人も魔物も怖うござりんす……」


 初めこそ勢いのよかった山の神だったが、突然怯えた様に縮こまってしまった。

 もしかして外が怖くて山頂から出れないの? て事は、消えたツララを放置してたんじゃなくて、対人恐怖症の引きこもりだから探しに行けなかったのか。だったら殴るのは止めとこう。トラウマとかって簡単に克服できるようなものじゃないからね。

 つまり、冬を終わらせるには山の神の心配事を解消する必要がある。そのためにはツララを連れ戻さないといけないわけだ。


『残念だけどツララは呪いで正気を失ってるわ。外が怖いなら私がツララを連れてくるわよ』

「ツララがそんな状況になってるなんて……でもお外怖い……。いえ、わちきも神の端くれ、部外者にそこまで頼めんせん。わちきも行きなんす!」


 おお、急にやる気出してきたわね。きっと探しに行きたかったんだろう。でも、その勇気が足りなかった。私は背中を押す切っ掛けにすぎなかったってところかな。眷属を大事に思ういい神様じゃないか。


『そうね、主が一緒ならツララも正気に戻るかもしれない。私はドラゴンのアテナ、よろしくね』

「わちきは山の神コノハナサクヤヒメ、よろしゅうお願いしんす」


 こうして、私たちは山の神コノハナサクヤヒメと一緒にツララを連れ戻しに行く事になった。

 ちょっと情緒が不安定な神様だけど悪い神じゃなさそうだ。待っててねツララ、今貴方のご主人様を連れて行くわ。

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