52.スノーウルフ
北の山脈を飛んでいる途中、犬型の魔物に追いかけらているのに気が付いた。その魔物は私の〖飛行〗よりも速度があり、徐々に距離が縮まってくる。
『あれはスノーウルフですな。北の大地に生息する獣タイプの魔物ですじゃ。自分の縄張りに入る者は例え格上相手だろうと必ず襲う狂狼、群れる事のない一匹狼として有名ですな』
『それはちょっと厄介そうね……』
群れない一匹狼か……狼ってのは基本群れで生活する動物だったよね。それがもし一匹でいるとしたら、群れを追い出されたか、そうでなければよほどの変わり者だ。
追い出された狼なら怖くない、怖いのは後者だ。変わり者ってのはバカにできない。1人で生きてく覚悟があるって事だからね。
そういう奴は好きな物には拘る。話を聞くかぎり、それが奴にとっての縄張りなんだろう。そうだとしたら油断できない相手だ。まずは〖鑑定〗だ!
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種族:スノーウルフ
ランク:C+
LV :39/55
HP :421/421
MP :192/192
攻撃力:387
防御力:235
魔力 :192
素早さ:434
通常スキル
〖毛皮LV7〗〖気配探知L7〗〖隠密LV6〗
〖体当たりLV6〗〖牙撃LV6〗〖爪撃LV5〗
〖毒攻撃LV3〗〖氷魔法LV4〗〖水魔法LV3〗
〖HP自動回復LV3〗〖MP自動回復LV3〗
魔法スキル
〖氷魔法LV4〗
〖アイス〗〖アイスニードル〗
〖水魔法LV3〗
〖癒しの水〗〖浄化の水〗
耐性スキル
〖物理耐性LV5〗〖魔法耐性LV2〗〖毒耐性LV3〗
称号スキル
〖一匹狼LV――〗
スキルポイント:1270
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私と同じC+ランク! しかもLVが高い! 種族差と称号のおかげでステータスは私の方が高いけど、こいつかなり強いぞ! ケクロプスほどじゃないにしても、町一つくらいは余裕で滅ぼせるほどの戦闘力を持ってる魔物だ!
『きますぞ主様!』
地上から近い所を低空飛行していたとは言え、10メートルは高さがあった。その距離をスノーウルフがジャンプで迫ってくる。
全力ダッシュからのジャンプ、スピードの乗った〖牙撃〗が私の体を切り裂く。ダメージを受けた私は〖飛行〗のバランスを崩し、地上に不時着した。
くっそ……! あの位置から攻撃が届くなんて……言ったそばから油断したッ!
『大丈夫ですかな主様?』
『ええ、この程度屁でもないわ』
『さすがは主様、頑丈ですな。むっ、スノーウルフの追撃がきますぞ』
スノーウルフは着地と同時に向きを変え、素早く私たちに迫ってくる。
クッソ狼が! ドラゴンの力を舐めるなよ!
スノーウルフに向けて〖真空斬〗を繰り出すが、華麗なステップで躱されてしまう。
くそっ、速いぞこいつ! 素早さのステータスが高いだけある。だったら連射だー!
「ガゥオオオッ!」
〖真空斬〗の連射がスノーウルフの体を切り裂くが、スノーウルフはスピードを落とす事なく突進してくる。〖真空斬〗で腕を振り切った体勢の私は突進を躱せず〖体当たり〗の直撃を受け、後方に吹き飛ばされてしまった。
くぅ……痛ぁぁ、くない? あれ、衝撃で吹き飛ばされただけであんまりダメージはないぞ。私のステータスが上がった影響で、この程度の攻撃は耐えられるようになったみたいだ。
言うて100はダメージを受けてるし、速攻で畳みかけられたらヤバいのは変わらない。あの〖体当たり〗には気をつけないと。
「ガルルオオオッ!」
ダメージが少ない事を察知したスノーウルフは再び私に向かって駆け出した。
やっぱり追撃にきたな、そうくると思ったよ! 〖ダークミスト〗!
私は突進してくるスノーウルフに向かって〖ダークミスト〗を発生させる。黒霧による目くらましだ。
まだ北の山脈に入ったばかりだし余力は残しておきたい。隙を作って安全策で勝つ!
「グルルル……」
〖ダークミスト〗で視界が塞がれ、スノーウルフの動きが止まった。
よっしゃー好機! 黒霧で位置がわからないのは私も同じ、ここは〖ファイアブレス〗で範囲攻撃だ!
私の〖ファイアブレス〗が散布した黒霧ごと焼き払い、熱風が周囲の雪を蒸発させ、大量の水蒸気が辺りを包んだ。
やったか? いや、経験値取得アナウンスがこない。まだ生きてるぞ!
「ガルオオオッ!」
もう一度〖ファイアブレス〗を打ち込むため、大きく息を吸い込んだその時、焼かれたはずのスノーウルフの雄叫びとともに、水蒸気の中から先の尖った氷の塊が数本飛んできた。
氷の氷柱! これが〖氷魔法〗の〖アイスニードル〗か!
ダメだ避けれない! ぐぅ……ッ!
クソッ、やられた! スノーウルフの奴、〖ファイアブレス〗の方向から位置を割り出し、アイスニードルを撃ってきたのか!
氷の氷柱は私の体に刺さり、その勢いで後方に飛ばされてしまう。私は追撃を避けるため、地面を転がってすぐに立ち上がり、〖癒しの水〗で回復しつつアイスニードルの飛んできた方向に視線を向ける。
やがて水蒸気が治まり〖ファイアブレス〗で体の焼かれたスノーウルフの姿が見えた。その皮膚は焼けただれ荒い息を立てているが、目だけは死んでおらずギラついた瞳で私を睨み付けていた。
ごめん、あんたはガチの命懸けで私と戦ってたんだね。それを安全策で倒そうなんて甘かった。謝るよ。ここからは私も全力でいくわよ!
「ガァアアアッ!!」
遠距離攻撃は止めだ! 接近戦で一気に蹴りを付けてやる!
スノーウルフが気合の雄叫びを上げ、大口を開けて向かってくる。それと同時に私も駆け出す。
〖牙撃〗狙いか? だったらこうだぁあああッ!
私に噛みつくために開けた口目がけ、貫手の形で〖爪撃〗を繰り出し、スノーウルフの口に突っ込ませた。
「ガ……フ……ッ!」
どうだ! 生物は口の奥に物を突っ込むと息ができなくなるんだ。って、昔読んだ格闘マンガに描いてあった。本当は大型の獣相手に拳を突っ込む技なんだけど、それをアレンジして〖爪撃〗で突っ込む!
口に〖爪撃〗を入れられたスノーウルフは呻き声を上げ、苦しそうに身悶える。
お前は強かったよスノーウルフ、今楽にしてやる!
私は腕に力を込め、そのままスノーウルフの喉を突き破った。
【経験値を1182取得しました】
【宵闇幼竜はLV31からLV34に上がりました】
【スキルポイントを取得しました】
『やりましたな主様。しかしこやつ、意外と強かったですな』
『ええ、私も驚いたわ』
やっと倒せた……正直〖鑑定〗した時点じゃもっと余裕で勝てると思ってた。戦闘はステータス差だけで決まるものじゃない。心の強さで覆る事があるって教えられたよ。
『山頂に近づくほど強い魔物が生息していると聞き及んでおりましたが、まだ中腹だと言うのにこれほどの魔物が現れるとは……北の山脈、侮れませんな』
『ええ、気を引き締めていきましょう』
そうだ、ここは前にいた森と比べて魔物の平均LVが高い、森で最強になった私たちでも新しい土地にくれば脅威となる魔物が出てくるんだ。
私たちは北の山脈の怖ろしさを再認識しつつ、再び山頂めざして飛び立った。




