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転生したらトカゲだった~進化を重ねて最強のドラゴンになれ~  作者: ギッシー
第2章 北の山脈編

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49.終わらない冬

 麓に到着すると、まだ距離があるにもかかわらず町の喧騒が聞こえてきた。

 おかしいな、以前様子を見にきた時はもっと静かな町だったのに、祭りでもやってるのか?


 正体がバレないよう注意しながら町に入ると、若い冒険者風の人間たちの姿を多く見かけた。

 こいつらどう見ても町の住人じゃないよな。もしかしてあれか? 私に挑むために各地から集まった冒険者たちか?

 逃げる奴は追わなかったけど向かってくる人間は大分殺したから、最近はめっきり挑戦者も現れなかったんだけどな。町にはまだこんなにいたのか、これはなおさら見つからないようにしないとだ。何しろ今の私は裸の上に外套一枚、完全に変態じゃん。見つかったら社会的に死ぬぞ!

 魔物に社会があるのかって? 私はこう見えても名の通った魔物だよ? 「アテナってドラゴンは〖人化〗すると裸に外套一枚の変態らしいぞ!」なんて噂が広まったら恥ずか死ぬわ!


 私はスキル〖隠密〗を発動し、冒険者たちに気付かれないようにユナの家を探す。

 ユナは町長の孫だから一番立派な家に住んでるはず。まずは大きな家を探そう。

 目星を付けて探索し、町の中心辺りでひと際大きな家を発見した。〖気配探知〗で中を確認すると、二つの反応があった。


 間違いない、この反応はユナとテルメンだ。って事は、ここが目的のユナ宅で間違いないな。

 ドアをノックすると、中から「はーい、今開けるよー」とユナの声が聞こえてきた。

 よかった、やっぱり家にいたみたい。


「おまたせーって、ふわぁ…….可愛い! 初めて見る人だ! でも、どこかで会った気もするけど……」


 姿を見せたユナは〖人化〗した私に気が付かず戸惑っている。

 あれ? 意外と人見知りするタイプなのか? いや、違うな。私がめちゃめちゃ怪しい恰好してるから警戒してるんだ!


「私よユナ、アテナよ」

「そうだアテナ師匠だ! なんかどっかで会った事ある気がしたんだよねー! ってかアテナ師匠、今日は〖念話〗じゃないんだ。普通に喋れたんだね」

「〖人化〗状態なら人間の口があるから喋れるのよ。どう? 前より人間に近くなったでしょ? もう半魚人とは言わせないわよ」

「うん、可愛いよ! まだちょっとおかしい所もあるけど、可愛いよアテナ師匠!」


 私は目深に被ったフードを脱ぎ、素顔を見せる。すると、ユナはドラゴンの姿を見た時と同じように、目をキラキラ輝かせてはしゃぎだした。

 可愛い? 私が? えへへ、そう言われると悪い気はしないわね。正直転生前の私は道を歩けば男も女も振り返るくらい自他共に認める美少女だった。褒められるのには慣れてるけど、それが可愛い美幼女からなら凄く嬉しいわ。


「こんにちわアテナ殿。〖人化〗までできるとはさすがですな。して、町にまで出てこられるとは、急用ですかな?」


 後ろに控えていたテルメンが話に入ってきた。

 そうだ。私は用があってここまできたんだよ。


「急用ってわけじゃないんだけどね。ユナがいつもの時間になってもこないから心配で見にきたのよ。どうしたのユナ? LVが上がらなくて悩んでるの? 私とギン爺で対策を立ててるから心配しなくていいのよ?」

「ごめんねアテナ師匠、ユナは悩んでたんじゃないよ。今は町が大変で、その手伝いをしてたの。それでね、暫くは忙しくて修行にはいけないんだ。言うのが遅れてごめんなさいアテナ師匠」

「町が? 何かあったの?」

「それについては私から説明します」


 ユナが悩んでいなかったのは良かったけど、修行に現れなかったのには理由があるらしい。それについてはテルメンが説明してくれた。


 テルメン曰く、例年通りならとっくに春がきているはずなのだが、異常なほど冬が長引いている。その影響で、冬のために備蓄していた薪と食料がなくなりかけているらしい。

 冬の間は買い出しにもいけないし行商人もこれない。本来ならそれでも足りる量があったそうなのだが、ドラゴン討伐で冒険者が集まり足りなくなったそうだ。

 あれ? それじゃ私のせいで備蓄がなくなったって事……?


「ごめんなさい、私のせいで冒険者が集まってしまったみたい……」

「いえ、集まった冒険者が町にお金を落としてくれて、私らにも利益がありました。問題なのは春が訪れない事です」

「見たところ腕利きの冒険者が集まってるようだし、奴らなら冬でも帰れるんじゃないの?」


 町にはまだ数十人の冒険者の姿があった。

 私を倒すために集まった実力者だし、あいつらが帰れば備蓄問題も少しは解消されるんじゃないの?


「それがそうもいかんのです。冒険者には怪我人も多く、そうしたパーティーは重症のメンバーを置いて帰れないと町に残っているのです……」

「それはごめん、戦いを挑んできた相手には手加減できないから。でも私、結構冒険者をっちゃったと思うんだけど、まだあんなにいたのね」

「いえ、アテナ殿は命を狙われているのですから、それは当然の対応です。寧ろ町としては冒険者が訪れた事で利益を得たのですから、お礼を言いたいくらいですよ」


 私目当てで集まった冒険者を相手に商売をする。そうして経済は回っていくのね。


「それにしても、私と戦って逃げた相手は部位欠損とか大怪我してたのによく生き延びたわね」

「この町には天才薬師がおりましてな、回復にはまだ時間がかかるでしょうが生きております」


 それはよかった。私もりたくて殺ったわけじゃないからね。人間を殺すのは気分が悪い、生きてると聞いてちょっと安心したよ。

 しかし、部位欠損すら治せる薬師ねぇ、〖肉体再生〗のスキルを薬で再現してるのか? 凄い人間がいるもんだね。でも、そんな天才がなんでこんな田舎町にいるんだ?


「そんな人がこの町にいたんだね。その薬師ってどんな人なの?」

「薬師殿ですか? 彼は数年前町にやってきました。この町に薬師がいないと知り、それを不安に思った彼は定住して町の薬師になったのです。薬師として信頼を得た彼は、今では町の運営にも係わる重要人物となっております」


 テルメンが質問に答えているその時、家の扉がノックされた。


「備蓄についての話しをするため、今日我が家にくる約束をしていたのです。どうやら丁度きたようですな。アテナ殿ならば会ってみればわかりましょう」


 そう言ってテルメンは入口に向かって歩き出した。

 会うだけでわかるかなぁ、みんな私の事買い被りすぎてない? まぁいいや、そこまで言うなら会ってみましょうか。

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