45.弟子
妹を助けるためにやってきた挑戦者に爪を渡したら喜んで帰っていった。
さっきの奴めっちゃ感謝してたなー、あんなに喜んでくれるなら私も爪をあげた甲斐があるってもんだよ。
「すっげーっ! アテナつえー! 今の人たち有名な冒険者なんだよ! そんな人たちが逃げてったよー!」
少し離れた場所からユナが大はしゃぎで走り寄ってきた。後ろには祖父のテルメンもいる。どうやら近くで私の様子を見ていたようだ。
『ユナ殿がきたようですな主様、死体を隠した方がよいのでは?』
『いけね! まだユナには早いわ、隠すわよギン爺!』
ギン爺の忠告で周囲に冒険者の残骸が転がっている事を思い出した私は〖ダート〗で大きめの穴を掘り、急いで死体を放り込んで穴を塞いだ。
よし! これでオッケー、証拠隠滅完了! 後で埋葬してあげるから待ってて!
「ねえねえ! ユナもアテナみたいに強くなりたい! 教えてくれないかな? ユナも戦えるようになりたいの……ッ!」
私の傍までやってきたユナから真剣な顔でお願いされる。いつもの笑顔が消え、本気さが窺えた。
『弟子になりたいって事? 戦いは遊びじゃない、死ぬかもしれないんだよ』
強くなる前に死ぬかもしれないし、例え強くなったとしても上には上がいる。自分より強い奴と戦えば死ぬかもしれない。この世界の戦いとは命のやり取りなのだ。
「……それは知ってるよ。でも、ユナにだって、強くなってやらなきゃいけない事があるんだ……ッ!」
私はユナの気持ちを確かめる質問をするが、その表情にはいつものユナとは違う、切なる願いが感じられた。
あ、これマジなやつだ。本気で強くなりたいみたい……。
どうすんのよ? という気持ちを込めてテルメンを見やる。
「……私の息子夫婦、つまりユナの両親は魔物に殺されたのです。魔物を憎む心、両親の仇を討ちたい想いがあったのでしょう。止めるべきなのでしょうが、私もまた大切な人を奪われた憎しみを知っています。本来であれば私が仇を討ちたいところですが、年を取り過ぎました。若いユナの気持ちを止める事はできんのです……」
両親を殺されたユナと同じように、テルメンも魔物を憎んでいるんだな。わかるよ、恨みは自分で晴らしたい。けど、それができないなら、せめて自分の信頼する相手に晴らしてもらいたいって気持ち。
仇討ちなんて無意味だって言う人もいるけど、私はそうは思わない。自分の大切なものを奪った相手がのうのうと生きてるなんて許せないもの。憎しみは忘れるんじゃなくて晴らすものだからね。ベットするのは己の命だ。頑張れユナ!
でもさ、私も魔物なんだよなぁ、そこんとこどうなのよ?
『私も貴方たちが憎んでる魔物だよ。そんな相手に任せていいの?』
「私の町には昔から伝わる世界を救うドラゴンの物語、ドラゴン救世主伝説があるのです。ドラゴンは魔物ではなく神の使い、または神その者とされております。そんなアテナ殿だからこそお願いしたいのです」
疑問に思っている事を聞いてみると、テルメンから意外な話が飛び出した。
ドラゴン救世主伝説か、私にも〖町の救世主〗なんて称号スキルがあるし、あながち嘘じゃないかもねその伝説。魔物なのに人間の味方をするなんて、私の他にも奇特なドラゴンがいるもんだ。
う~ん、私としてもユナの復讐を手伝ってあげたいし、弟子にしてやるかー!
『わかったわ、弟子にしてあげる。その代わり、私の修行は厳しいわよ』
「やったーありがとう! よろしくねアテナ師匠!」
『しっ、師匠!?』
悪くない……いや、寧ろ新鮮でいい! 可愛いユナに呼ばれるからこそ効果は抜群に上がってるわ!
でもさ、戦いを教えるって何したらいいんだろ? やっぱりまずは現状を知る事が必要かな?
そんじゃあ〖鑑定〗だ!
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〖ユナ〗
種族:人間
LV :1/70
HP :14/14
MP :7/7
攻撃力:10+5
防御力:5+2
魔力 :7
素早さ:8
装備
〖果物ナイフ:Eランク:攻撃力+5〗
〖布の服:Fランク:防御力+2〗
通常スキル
〖人間言語LV4〗
耐性スキル
なし
称号スキル
なし
スキルポイント:10
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おおおっとこれは弱い!
見事な低ステータスだわ!
初期の私と大差ないよ!
まあ子供だしこんなもんか、人間は成長する生き物だ。徐々に強くなっていけばいいんだよ。
んっ、徐々に……?
えええっ! 初期ステータスは低いけどLV上限70もあるやん!
いっぱしの冒険者だったアランでも最大LVは35だったし、聖女になる前のフェリシアでさえ最大LVは75だった。って事は、もしかしてユナって凄い才能があるのか?
今は弱いけど、これは大器晩成型だな。成長が楽しみになってきたぞ!
「うぅぅ、なんか悪寒がするよぉ……」
「悪寒? もしや〖鑑定〗ですかな? して、ユナに才能はあるのでしょうか?」
〖鑑定〗の効果で身震いするユナを見て察したのか、勘のいいテルメンが〖鑑定〗に気付いて問いかけてきた。
『ええ、凄い才能を秘めてるわ。でも今は弱いから、私が鍛えてあげるよ』
「まさかユナにそんな才能があるとは……! 孫娘をよろしくお願いしますアテナ殿」
才能を伝えるとテルメンは驚きを見せつつもすぐに平静を取り戻し、私に頭を下げてお願いしてくる。
うんうん、大事な孫娘だもん心配だよね。私もユナが死ぬところなんて見たくない、強くなれるようにしっかりとサポートするよ。
『そんじゃあさっそく修行にいくわよ! ついてきなさい!』
「うっす! よろしくねアテナ師匠!」
こうして私はユナを連れて外へ飛び出す。
弟子を取るなんて初めてだけど、私に任せておきなさい。立派な戦士に育ててあげるからさ。




