灯ケイの場合 2
冬の夕暮れ
ベンチで冷えたお尻
目の前には侍
いやおかしい。なんだこの脈絡のない文章は。
今どきアニメでもこんな謎展開無いぞ。
よし、とりあえず状況を整理しよう。
まず、ボクはいつものとおり、夕暮れと共に1分眠った。
いつもどおり目が覚めて、立ち上がって後ろを向いた。
侍がいた。
……
まさかこれ以上整理できないとは思わなかった。
と、思考を巡らせても何も改善しない状況を、侍の言葉が終わらせた。
「おぬし、さっき寝ておったな! もしや、夕死の体質か?」
突然の問いかけにたじろぎ、そしてボクの体質に聞かれ思わず目を見開いた。
「ゆう…し…? 確かにさっき寝てたけど、ゆうしって…?」
ボクの回答に、“まさか”という表情で侍が答える。
「おぬし、自分の体質をしらんのか? 父上か母上には教えてもらわんかったのか?
ワシの生きてた頃には、夕死の体質といえば皆刀を置いて去っていったものだが。」
ダメだ、さっぱり分からない。
それに「ワシの“生きてた頃”」って……。
「小僧、名前をなんという」
うおっ、名前を聞かれた。
答えていいものかどうか、いや、死にたくないし答えよう。
「灯…灯ケイです…。」
すると侍はあごひげを“ちょい”とさわって。
「フム、良い名じゃの!
よいかケイよ、お前が毎日1分間眠っているのは“夕死”という体質のせいじゃ。
夕死とは、名のとおり、夕日が沈むと1分間死ぬ体質じゃ。
そして1分後、何事もなかったかのように生き返るのじゃ。」
ーーは??
この侍、今なんて言った??
毎日1分間死んでいる?? 眠ってるんじゃなくて??
それで生き返る?? ウソでしょ??
「いや、そんなことあるはずがなーー」
言いかけて、過去、友人からかけられた言葉を思い出す。
「心臓止まってたよ!」
「息してなかったよ!!」
「瞳孔めっちゃ開いてたよ!!!」
うーん…心当たりがありすぎる…。
え、いやいやホントにボク死んでたの?? 毎日??
動けないでいるボクを見下ろして、侍が続ける。
「なんじゃその顔! 本当に知らんかったのか!
自分が毎日三途の川を眺めておったというのにのう! ハハハハハ!!」
えー…何この展開…。
もう思考が追い付かない。たとえ、ボクがこの小説の主人公だったとしても…だ。
いやまてよ、もしホントに主人公だったら、こんな態度、主人公としてかっこ悪いぞ?
ああもうなんだかなあ。いつもと同じように下校してただけなんだけどなあ。
えっ、もしかしてここからこの小説始まる??
ボク、これからアレコレ変なことに巻き込まれるの??
なんかライバル的なのと戦ったり? 美少女と仲良くなったり? そういう展開も??
まとまらない頭を体感1万回グルグルさせ、ええいままよと一歩前に出る。
「えっと…もうちょっとこう…具体的に? 教えてもらえると…?」