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夕死  作者: レシア・U・パエリア
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灯ケイの場合

ああもう日が暮れる。いつもの場所に行かないと。

日没の早い12月。ボクは急ぎ足で公園のベンチへ向かった。


「よし、ギリギリセーフ」


ベンチに座るとそっと目を閉じる。

冬の空気に冷やされたベンチは制服越しでも冷たい。

そしてだんだんとベンチの感覚は消えていき、スッと眠りに落ちる。


………


目を覚ますと、木にとまっていたカラスが足元近くへ移動していた。

時間にして約1分。今日も日が落ちるやいなや死んだように眠っていた。


そう、じつはボク「灯ケイ(ともしび けい)」には2つのフシギがある。

1つ目は、日暮れ直後に約1分間、死んだように眠ること。

2つ目は、ある日突然能力に目覚めることだ。


1つ目は今みんなが見たとおり。毎日だからもう慣れたけど、友達が言うにはホント死んだように眠るらしい。息が止まってるとか、心臓が動いてないとか言われたこともあるけど、多分冗談だと思う。


2つ目はよくわからないんだけど、ときどき能力に目覚めることがある。例えば、手先がメチャメチャ器用になったり、遠くの声が聞こえるようになったり、それから…ああそうそう、君たちの存在が理解できるようになったりね。


君たちって誰かって? 画面の前のこの小説を読んでる君たちだよ。

ボクはある日から、この世界が小説の中だと理解できるようになってさ。君たちに“読まれてる”感覚も分かるようになったんだ。でも分かるだけで、話しかけたりはできないんだけど。


そんな能力が突然発現するんだ。また突然使えなくなるのもあれば、この能力みたいに定着するのもある。ほかに定着した能力といえば、ひよこのオス・メスをコッソリ変える能力と、小銭を手の中で両替する能力、それからクレーンゲームのアームを少し強くする能力とか…。いやあ、二段ジャンプができる能力は定着してほしかったなあ…。


まあ、そんな感じでボクは少しばかりファンタジーな存在なんだ。最初は不思議だったけど、小説の中だと分かったらなんとなく腑に落ちたけどね。でも、これら2つのフシギにどういう意味があるのかはサッパリ分からないんだけど。


さて、ちょっと語りすぎたかな。

さすがにこの時期の公園は寒い。君たちもやることがあるだろう? そろそろ読むのを切り上げてーー。


「は?」


ベンチから立ち上がって振り返ると、そこは日本刀を携えた鎧姿の男が立っていた。

筋骨隆々とはこのことか。露出した腕や脚は金属かと思うほど鍛え上げられており、首筋まで肉体の逞しさがにじみ出ている。そして、こちらがどう動いても殺されるような、他を寄せ付けない殺気が感じられた。

そして男はこちらの視線に気づいたようで、キョトンとした顔で口を開いた。


「おお、ワシに気づいたのか。気づかれずに終わると思っていたぞ!」


ボクはそれからしばらく思考を手放し、まだ低い月を背に立つ彼をただ見ることしかできなかった。



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