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古代より三つに分断された土地。
そこには、北方領地を治める白と騎士の国があった。
その最北端にあるトルメル城内の王の間は、白一色の甲冑を着た銅像が所狭しと並べてあり、天井画家による騎士の絵が描かれている吹き抜けの天井には、豪華なシャンデリアが遥か階下へとぶら下がっている。ガラス窓も特徴的であって、二人の騎士が剣を交えた絵が描かれていた。
「クシナよ……この戦争はまだ始まったばかりだ。余はまだ戦ってもいないぞ……」
「ふん! クラスド王よ! 貴様は元々……死んだも同然だったはずだ」
「……まださ。余は何度でも蘇る」
「……やはりな……ゼブル「高き館の主」に魂を売った貴様は……貴様さえ……ここで斬ってしまえば……う……あの時、貴様を斬っていれば……」
クシナ皇帝は、鞘に収めた斬功狼を震える手で握った。
玉座に座る。おおよそ人の姿とはいいがたいクラスド・エドガーに向かって、クシナ皇帝は斬功狼を抜いた。