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「やっぱり、侵入者って、鬼窪くんだったのね」
「ああ……猪野間か……」
「少し、話さない?」
「ああ、いいよ」
学生服姿の猪野間がこちらへくると、エレベーターの扉が閉まった。二人でクシナ要塞の奥の方へと向かう。猪野間が右を指差して、俺は頷いた。その指差す方向の仄暖かい一室に入る。そこは、喫茶室だった。
俺は一室の中央にあるテーブルについて椅子に座り、猪野間が二人分のコーヒーを淹れているのを見ていた。
「鬼窪くんは秋野くんのこと、どう思う?」
「え??」
俺は猪野間の唐突な話題に驚いた。
「……わからないんだ。なんかな。放っておけなかったんだと思う」
「そう、私もよ……」
「別に、秋野じゃなくても、俺は放っておけなかったんだよ。きっと」
「ふーん……」
猪野間が淹れたてのコーヒーを、二人分テーブルの上に並べた。椅子に腰掛けると、猪野間はゆっくりと口を開いた。
「鬼窪くん。あの、驚かないでね……。私の考えだけど、この異世界転生は、きっと秋野くんが関わっているんだわ……」
「え??? どういうことだ?」
「本当はここ異世界へ来るはずだったのは、失踪したはずの秋野くんの方なのよ……」
「……え?」
秋野が失踪?!
まさか……?!
嘘だろ?!