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耳をつんざく轟音と共に、白いピラミッド型のクシナ要塞に、その右下の角に大穴が空いた。中から大勢の怒号が聞こえてきたけれど、俺は気にせずに、箒を操りクシナ要塞の内部に入っていった。
クシナ要塞の内部の構造は、元の世界で都会人だった俺でも、驚くような近代的なものだった。なんと、ここにはエレベーターホールまである。
金属製の壁に床。はたまた電信柱まである。赤と黒のケーブルで、ごっちゃになっているけれど、それでも、機能的だなと思わせる内装だった。床は金属製のパネル式で、冷暖房機能があるのか、今は足底が冷たくて気持ちがいい。でも、ここ……殺風景なんだよな。
「マルガリータ……おい! 起きろ!」
何故かマルガリータは起きなかった。
それから、マルガリータの頬を引っ張ったり、肩を揺り動かしたりしたが、一向に起きてくれない。
バルカン砲にまさか毒でも塗ってあったんじゃ?
と思ったが、そういえば、俺もマルガリータも休むことなく戦い詰めだったんだ。
しばらく、身動きせずに静かにしていると、マルガリータから微かに寝息が聞こえて来た。
俺は仕方なく。右手のドアを開けたところに、真っ暗な階段があったので、その踊り場にマルガリータを隠すように横にさせると、エレベーターホールへと向かった。数ある中から一つのエレベーターを見つけ、案内板を覗いた。そこには、クシナ皇帝や貴族や元老院たちは、最上階にいるみたいだった。
ふーっ、俺もだいぶ疲れているが、まあ、なんとかなるか。なんたって、俺は陸上競技会へ出場した実力者だ。
体力だけは自慢なんだ。
ス――ッっと、音がしてエレベーターの扉が開いた。
箱の中には、先客がいた……。
それも、俺がよく知っている奴だ。