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「ああ。急ごう」
「ちょっと、待って!」
西田がポニーテールを強風に靡かせて、俺とマルガリータの間に割って入り、ゆっくりと右手を挙げる。
「強制転移!」
「え?!」
「へ??」
瞬間、目の前が白一色になった。
それから、しばらくして、光が徐々に消滅していくと、そこは……ラピス城の上空だった。
「あ、転移魔法ね。凄いわ! 私もお師匠も使えない高度な魔法なのに……」
「あの……マルガリータさん……。クシナ要塞の兵が銃で、こっちを狙ってるんですけど」
俺たちの右隣には、クシナ要塞が目と鼻の先にあった。
鉄でできた殺風景な天窓には無数のバルカン砲が設置され、灰色の鎧を着た。いかつい兵たちが陣取っていた。
「撃てーーー!!」
こっちに気が付いた兵たちの号令と共に、クシナ要塞の兵がそれぞれバルカン砲を撃ってきた。
「キャ――! 避けて!!」
マルガリータが箒に向かって、命令するも、大きくバランスを崩してしまっていた。弾丸の嵐の中。大揺れに揺れる大き目の箒の上で、マルガリータの身体は、クルリと箒の下の方へ回転して、そのまま下方へと落ちていってしまった。恐ろしいほどの弾丸が撃たれ、俺は誰もいなくなった箒にしがみつく。
「嘘だろ! こうなりゃ!!」
凄い風圧の中で、俺は箒をなんとか操る。
箒を操り、空中でマルガリータを掴み取るため、下方へと猛スピードで飛んだ。自分が何て凄いことをしているのかなんて、全然考えなかった。
空中で、マルガリータは気を失っていた。
どんどんと落下していく。
俺はそれでもお構いなしに、マルガリータの左腕を空で掴むと、大き目の箒へ乗せた。
クシナ要塞の兵は、それ以上俺たちを撃つのを止めたようだ。
きっと、射程距離外だ。
それより、一番の問題は、どうやって、あのクシナ要塞へ入るかだ……。
俺は箒を操り空を飛びながら考えた。
よし、この方法で行こう!!
俺は神聖剣を抜いて、鋼雲剣をクシナ要塞目掛けて打ち放った。