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俺は神聖剣を抜いた。
まずはなんとしても、アスティ女王の懐に入らなければ!!
神聖剣がアスティ女王に届く範囲に入るんだ!
この戦争を終わらすために、ここ廃墟と化した市街地でアスティ女王を必ず倒すんだ!
「おりゃーーー!」
俺は陥没した地面を軽いステップで避けて、アスティ女王にできる限り接近して、神聖剣を振り上げた。だが、アスティ女王の右肩目掛けて、神聖剣を振り下ろすと同時に、火花が飛んだ。アスティ女王は難なくグレード・バニッシュ・スターの鎖の部分で、神聖剣を弾いていた。
間近で見ると、グレード・バニッシュ・スターは大きな土色の球体が鎖に繋がっているだけの原始的な武器だった。アスティ女王が右肩を引っ込めて、左手に握ったグレード・バニッシュ・スターを大きく振り上げる。
土色の球体が天を舞った。
や、ヤバい!!
俺は目を閉じた……。
「強制転移!!」
眩い光の中から目を開けると、俺は激しい地響きを発し、大穴が空いた市街地の市場の屋根の上にいた。ここから離れた場所にいる西田が、右手を挙げていた。西田が転移魔法を俺に使ってくれたんだ。
西田の後ろには白い盾を構えたガーネットがいた。
ふと、俺は思った。
そうだ。この戦いには西田も俺に加勢してくれているんだ。
ガーネットは西田も通小町もソーニャたちも守ってくれるようだ。
アスティ女王との距離は、おおよそ300メートル。
今度は絶対!
懐に入ってみせる!!
俺は市場の屋根から助走し、再び、アスティ女王がグレード・バニッシュ・スターを、大振りに振り上げるところへ向かって飛んだ。
「強制転移!!」
「へ???!!」
急に視界が眩い光が覆い。
光が消えると、そこは……。
アスティ女王の真後ろだった?!
「ラッキーーー! 西田ありがとう!!」
俺は神聖剣の柄で、思いっ切りアスティ女王の左手首を打つ。
「うぐっ!」
「勝負あったな」
痛みのせいで、アスティ女王が苦悶の表情をしていた。そして、左手から唯一の武器であるグレード・バニッシュ・スターをゴトンと地面に落とした。
「鬼窪! 敵ながら、天晴だ……」
「いや、仲間とクラスメイトのお蔭さ……」