61
うー、寒い!!
真っ白な雲の中なので、寒くて身体が冷たくなってきた。改めてみてみると、ラピス城があんなに小さくなっている。こんなに早くに箒を操れるようになるなんて、通小町は確かに秀才だな。今、俺は遥か上空のブルー・アクア・クイーンから、グレード・シャインライン国目指して、通小町の乗る箒で飛んでいた。
もうすっかり、通小町は箒を完璧に操られた。
当然、飛び方はフラフラとしないし、今のところは、サンポアスティ国の兵も追ってこなかった。
「なあ、鬼窪。秋野のことなんだがな」
「うん?」
「お前のことはよく知っていたぞ。何度も助けてくれたって……」
「そうか……そうだったか……」
俺は前方に座る通小町の横顔を見つめた。それは、遠い前世を想っているようだった。きっと、懐かしいんだろうなあ。
あ、そういえば……。
通小町や西田たちはここへ来て、どれくらい経っているんだ??
俺は気がついたら、ラピス城に掛かる橋の下の海だった。
もう、安全だと思ったのか。
通小町は徐々に高度を下げていった。
「なあ、お前。この世界に来てから、どれくらい経ったんだ?」
「あれ? 言っていなかったか? 17年だぞ」
「17年ーーー?!」
え??
そ、そんなに?!
俺は驚き混乱した。
この世界に来たのが17年前だとしたら……通小町は俺と同じく17才のはずだから……ええと……。
カモメが数羽向こうから飛んできた。
通小町は箒に乗りながら、カモメに手を振り挨拶をしている。
「そうだぞ。バカか鬼窪。考えてみろ。こんな凄い力を1年や2年で習得できるわけないだろう?」
「う……」
「私も混乱したぞ。産まれたのが、ガルナルナ国のその辺の村で、物心ついた頃から、鬼窪のことを思い出してきて……あの時はさすがに大騒ぎだったぞ」
え?
なんで??
俺の記憶が蘇ると大騒ぎしたんだ?
「なんたって、鬼窪と一緒に、学校生活や友達や元の世界での生活。つまり、前世の記憶が蘇ったからだ。そりゃ、驚くぞ。過去、いや、前世の記憶がいきなり波のように、頭に押し寄せてくるんだぞ。村中が大騒ぎして混乱するのが当然だ」
「??」
「私は産まれながらにして、記憶喪失のようなものだったんだ」
うがーー!
俺まで頭が混乱してきたぞ!