05
突然、土の中からガラの悪い男たちが飛び出してきた。あっという間に俺たちは男たちに囲まれた。まるで、モグラのようだった。その証拠にボロボロの格好の男たちの肩や頭には砂ぼこりが付いていた。
「は、早く逃げよう!」
俺は少女の方を向いた。
少女は俯いたままだったが。大きな箒を一振りし、顔を上げた。俺の腕を掴んで箒に跨ると、不思議な事に俺たちの身体ごと空中に浮いてきた。
「君の名前は? さあ、飛ぶわよ!!」
「鬼窪 功一だ!! 飛ぶって、その箒でか?!」
「うん! ……って、あれ?」
急に辺りが静かになった。
周囲のガラの悪い男たちが皆、何故か青い顔をして震えだしていた。
一体こいつらどうしたんだろう?
男たちは俺の顔を見ながら、息もできないのか喉を抑えて震えだした。
「ああ、そういえば! 君があの最凶最悪といわれた黒の骸盗賊団の息子のオニクボなの?!」
「へ……え……? ちが……」
そう……。
………
「ううん、そうよ……。そうだったわ」
「なんだ? 今の間は??」
混乱する俺にマルガリータが控えめにウインクすると何度も頷いた。
「そうそう、あなたが黒の骸盗賊団の頭領の息子でしたものね」
マルガリータは額に冷や汗を流しながら嘘を並べた。
「あの、盗賊団の人たちに言っておきます。私は今まで頭領の息子を介抱していたんですよ」
な、何を言ってるんだ??
マルガリータが都合のいい嘘を吐くと、途端にガラの悪い男たちは、一斉に泡を吹くもの。腰を抜かすもの。この場から一目散に逃げ出しまうものがでてきた。固まったかのように突っ立っていた男たちが、やっとのことで俺たちに頭を下げた。そして、草原全体が震えだすほどの大声を出してくる。
「そ、そうだったんでやすか! すいやせんでしたーーー!!」
「そりゃ、すいやせんでしたー!!」
「うー、すいやせん!!」
男たちは皆、泣いて謝ってくる。
俺はズッコケた。
マルガリータが俺の掴んでいた腕を強くつねると、耳元で小声で話して来た。
「鬼窪くん。君が何者でも構わない。だけど、今は黒の骸盗賊団の頭領の息子のオニクボになっていて……お願い……」
「あ、ああ……わかったよ。でも、それより俺急に腹が減って……倒れそう……なんだ……よ」