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56

 西田は途端に俯いた。


「あのね……鬼窪くん。ごめんね。どうしても、君自身から確認したかったの。……私たちは、異世界人の中でも転生者なんだって……。だから、どんな転移魔法でも元の世界へと帰られないんだって……」


 しばらくすると、西田は涙を流した顔を上げた。牢屋は不気味なほどシンと静まり返っていた。

 

 学生服姿の西田は背が低くポニーテールの似合う子だ。

 瞳は大きく。

 昔から笑うと、えくぼが出来るとても優しい子だった。

 その顔が、何かを決心したかのような固さを秘めた。


「今までごめんね! 鬼窪くん! 強制転移!!」

「う、うわーーー!!」


 西田がそう叫ぶと、俺の足元が光り輝き、激しい光りが発せられる。光の中に消える寸前。俺の瞼に最後に映ったは、涙を拭っている西田と、そして、その後ろにいるヒッツガル師匠の姿だった……。

 

 きっと……。

 わかってくれたんだな。

 

 ヒッツガル師匠と話していたんだ……。


 西田は……。



 眩しい光から解放された俺は、目を開けると、そこはラピス城の強風に煽られた橋の上だった。

 

 サンポアスティ国の旗が至る所に立っていた。

 怒号の声もしない。悲鳴もしない。血の臭いしかしない。


 俺はしばらく、橋の上をフラフラと歩いた。


 橋の上はすでに死者の山だった。ラピス城側の騎士団の死骸が散乱していた。幸い。ソーニャの姿は見えなかったが、意外にも、倒れている者たちに黒の骸盗賊団の盗賊団たちの死骸がちらほらと見える。そして……オニクボ?!


「大丈夫か!!」 


 俺は黒の骸盗賊団の頭領のオニクボに駆け寄った。

 その胸には長剣が深々と突き刺さっていた。橋の上のど真ん中で大の字に倒れている。出血も激しく。呼吸が苦しそうだったが、辛うじてオニクボは生きていた。


「よお、言った通りだろう……ぐふっ! 相手は強国だ……当然、おつむもいい……」

「ああ、すまない……俺たちが甘かったんだ……」

「ぐふっ! がはっ!」

「それ以上喋るな!! オニクボ!!」


 オニクボは激しく吐血しながら、髑髏のナイフを俺に預けた。俺はそれをすぐに受け取った。


「これをお前に……」

「わかった! 死ぬなオニクボ!!」


 オニクボはもう力尽きそうだった。焦点の合わない目をして、最後に、こう言った。


「へへ……俺にも幻って奴が見えてきたな……。皮肉なもんだ。こんな俺が天に昇る時がきやがったんだ…………箒に乗った……聖女が見えるんだ……」

「……へ??」


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