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 さすがにグレード・シャインライン国の本国までは、ラピス城の濃霧は来ていないけど、視界が悪くなるような真っ白な入道雲の群れが南の方角から押し寄せてきた。


 目を凝らすと、その中心には茶褐色の古びたお城が空中にあった。全体を緑色の蔓で覆われていて、至る所から滝のような水の流れが城の上部から下方へと滑り落ちていた。


 なんでか、気圧のせいか肌寒くなってきたぞ!

 俺は盗賊衣装の肩のところを摩りながら震えた。 


「あの城。もしかして、空中を飛んでいるのか?!」

「いや、浮いているんだ!」


 通小町の言う通りに、よく見るとその城は浮いていた。

 周りの入道雲の群れがグレード・シャインライン国の本国へと近づいていくと同時に、城はぷかぷかとその中心でゆっくりとだが前進している。まるで、雲に浮く常夏の城だった。


「これは、確かに聖女様の言う通りね。兵がいないみたいよ」

「ふふふふふふ……そうだろう。マルガリータよ。サンポアスティ国は元々いわば衰弱しているんだ」


 フラフラとした箒を操る通小町の後ろに、座っていたガーネットは、大きな剣を構えた。いわゆる大剣だ。

 その大剣は長さが二メートルもあった。


 あんな長い剣でよく戦えるなあ。

 かなり重いはずだ。 


「ここは、バランスが悪いな……聖女様。あの城へできるだけ近づけてくれ」

「おっし、任せろって! 私はタクシーじゃないぞ!!」

「タクシー??」


 それでも、通小町はフラフラと小さな箒で、城の方へと飛んでいった。


「なあ、マルガリータ。俺たちは……どうする?」

「さあねえ……。あ、向こうから出迎えてくれたわ」

「うへええええーー!! か、通小町!! 危ない!!」


 俺が叫ぶと同時に、前を飛ぶ通小町が急に回れ右した。


 周囲の入道雲からサーフィンに乗った軽装の鎧姿の大量の兵たちが、グレード・シャインライン国の本国へと降りだした。


 サーフィンで斜めに降下するその人たちは、その鎧が土を思わせる茶色だった。


 そして、一部の兵たちが俺たちに気が付がついた。こちらへ向かっていきなり発砲してくる。

 撃っている銃はライフル銃だ。


「見つかった?! まずいわねえ……女王を倒すどころか、これじゃあ、長期戦になるはずはないと思うけど、消耗した兵たちに、こっちが消耗してきちゃうわねえ」


 マルガリータは火炎弾を同時に五発前方へ放ち応戦する。

 過激な爆破音の後、粉々になった兵たちの茶色の鎧が空中で散乱したが、だが、危機に瀕した兵の大半がこちらへ撃ってきてしまった。

 

 通小町はライフル銃を器用にフラフラと回避している。後ろのガーネットは大剣で幾つかの銃弾を弾いていたが、サーフィンをしている兵の数はどんどんとこちらが圧倒されるほどになってきた。


 どうする?

 さあ、どうする?

 このままじゃ、いずれ蜂の巣だ。


 俺は考えた。


「鬼窪! 女王だけ仕留めろ!! 予定変更だ!! 私たちがここをなんとかするから!! マルガリータと鬼窪は、さっさとあの城へ行け!!」

 

 通小町がそう叫ぶと、ガーネットが囮になるかのように、箒の上で赤い髪を靡かせて大剣を振りかざした。


 多くの兵が通小町とガーネットの乗る箒に群がる。 

 

「じゃあ、行くわよ! 鬼窪くん!」


 マルガリータは俺を乗せて、猛スピードで茶褐色の城まで一直線にすっ飛んだ。


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