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「あ、あたしは嫌だね。いつも王女のお傍にいたいんだよ……」

「そういうな。きっと、サンポアスティ国の王女の武器には、対抗できるガーネットの力が必要なはずだ。そして、これは王女としてのお願いだ。頼む」

「……」


 ソーニャの真剣な気迫が隣にいる俺にも伝わって来る。ガーネットはそのソーニャの王女としての聡明さに渋々と頷いた。


 それにしても。

 ガーネットの力って一体?

 まさか、グレート・バニッシュ・スターにぶち当たっても平気だったり?

 俺は、ガーネットが素手でグレート・バニッシュ・スターを受け止めているところを想像していた。 


「ソーニャ様……わかりました。それじゃ、鬼窪。グレード・バニッシュ・スターは私が一人で何とかするから、お前は神聖剣でサンポアスティ国の正規軍なりなんなりと戦っていてくれよ」

「へ……? え? あの武器を一人で……? 本当に大丈夫なのかガーネット? あんなものを素手で受け止めることができるのか?」

「ああ……似たようものさ……」


 ガーネットは赤毛の長髪を靡かせて、平然と軍会議室の外へと出てしまった。その巨大な背は、俺には何故か凛々しく。美しく見える。


 窓の外は明るい夜明け前だというのに、フクロウの鳴き声が妙に様になっていた。今は何時だろう?


 その時、騎士の一人がソーニャの脇に駆け寄り、耳元で何かを囁いた。

 ソーニャはコクリと頷いた。


「ヒッツガル師匠はここへ残っていてくれ」

「ああ、いいよ」


 ソーニャの声音にはどこかしら珍しく緊張が感じられた。

 そうか! 多分、オニクボがいつ反乱を企てるかわからないからだ。

 そして、俺の考えは当たっていたようだ。


「あはははは! 王女よ。そりゃ賢明だなあ。そこのヒッツガル師匠って奴の暗殺に失敗した俺さまに、この国の資源を少し無条件で分けてやるっていうから、協力してやってるんだからよ。そうだよな。いつ俺さまに寝首を掻かかれるか、わかんねえだろうからなあ」


 部屋の隅っこのオニクボからは、ニタニタと笑っている。ここからでもわかるほどの威圧感が滲みだして来た。その威圧感で俺は背筋が寒くなってきた。けれど、それと同時に、何かとてつもない空気? いや、これが魔力か? が、部屋一杯に充満し、威圧感を綺麗さっぱりと消し飛ばしてしまった。


「王女よ。どうかご安心を。オニクボが危険な行動を取った場合は、サンポアスティ国を楽に吹っ飛ばしてしまうほどの強力な魔法を連発してやりますよ。それに誰に私の暗殺を頼まれたのかな? 大方、周辺の強国の誰かだろうがね」

「ふははははは!! ……そいつぁ、まっぴらごめんだな!! それに俺さまに暗殺を依頼した奴は……さすがに、今の段階では言えないぜ。大方、どこぞの強国のお偉いさんだと思っていてくれよ」

 

 オニクボの大笑いが部屋中に鳴り響いた。

 騎士たちはたじろぎ、不穏な空気が漂うが、ソーニャとマルガリータは平然としていた。

 

 うん??

 どうして?

 あ、そうか!


 きっと、二人共ヒッツガル師匠の本当の魔法の力を知っているからなのだろう。


 うーん……。

 さすが、ヒッツガル師匠。

 怖いくらいに頼もしい。

 でも、ヒッツガル師匠の魔方向音痴はまだ治っていないんだろうなあ。

 

 うん??

 サンポアスティ国との戦いで怪我をした場合は??

 

「あ、そうだ! 通小町も来てくれ。大方、狙いはお前もこの国の資源なんだろ」

「ウッキー! その通りだが。だが、違う。私はこの国そのものが欲しいんだ! それと、鬼窪。私に命令するな!」

「じゃあ、ここへ残るのはヒッツガル師匠とブルードラゴンだね。そして、サンポアスティ国に偵察に行くのは……そういえば、マルガリータ。箒はちゃんと飛ぶのか? 重くないかな? こっちはガーネットと通小町と俺とで三人でいくんだし」

「大丈夫よ。魔法が使えるのは私だけじゃないわ。ほら、この人もいるんだし」

「ふふふふふふ……この秀才に不可能はない」

「え……? 通小町も箒で空を飛べるのか?」

「ああ。だが、鬼窪は絶対に乗せないからな」

「……」


 窓の外から本格的に朝日が昇って来た。会議が終わり。みんなが出ていくと、ソーニャがヒッツガル師匠と少し話があるといい軍会議室に残った。


 サンポアスティ国。

 一体。どんなところだろう?

 それに、ここラピス城へどこまで進軍しているのだろう?


 帰り際に石扉の近くで、オニクボが俺の顔を覗いて急にニッと笑った。だが、目は決して笑っていなかった。

 

「鬼窪くん。お前、これでマジでいいと思ってるのか?」

「え? いや……??? まさか!」

「あっはーー、いや。違うぜ。俺様たち黒の骸盗賊団は、この戦争がひと段落するまで西の草原で燻っていてやるぜ。その方が安心だろ」


 オニクボは口笛を吹いて、正門側の石階段の方へ帰って行った。

 一体。オニクボは何を考えているだろう?

 さっぱりだよ。


「ふう、オニクボ相手だと緊張するなあ」

 

 そして、今度は通小町が俺を呼び止めた。


「うん??」

「鬼窪。さっきの話の続きだが……。実際はまったく違っていたかもな。私の推測だが、いつもあいつの隣にいて庇っていたんだろ鬼窪は……。だから、猪野間とかにモテていたのは、秋野じゃなくて、鬼窪の方だったのかもな」

「へ……え……そんな……まさかなあ……」


 眩しい朝日が通小町の意地悪そうな顔を照らした。


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