南方のサンポアスティ国
軍会議室にはすでにみんなが集まっていた。
ここには騎士団とナイツオブラストブリッジ。そして、通小町しかいないと思ったけど、あの黒の骸盗賊団の頭領オニクボが部屋の隅にこちらの様子を窺うように立っていた。
俺はオニクボがここにいることが凄く意外だった。
警戒した方がいいのかな?
ガーネットが中央の木製のテーブルに、ハイルンゲルトの羊皮紙の地図を広げていた。その地図を覗くと、ラピス城からサンポアスティ国までの距離はどうみても800キロと書いてあった。
「うっへえええ……こんなに遠いのか?」
「あの国は周辺の強国の中でも、もっとも遠い国と言われているんだ。まあ、こんなものだろうな」
俺とソーニャは二人で地図を覗いて顔を見合わせた。
ほとんど日本横断できる距離じゃん……。
「ソーニャ様。恐らくサンポアスティ軍もここへ現在進軍中です。ラピス城へたどり着くには相当かかるとは思いますが……あれ? 開戦はいつのことだったでしょうか?」
「この戦争の開戦は確か2週間前だ」
マルガリータの質問にソーニャは即座に答えた。
もう、2週間も経っているのなら、サンポアスティ国の軍は、だいぶ近いところまで来てしまっているんじゃないかな?
誰か偵察ができればなあ。
と、俺の頭に一人の少女が浮かんだ。
「マルガリータ。すまないけど、俺と一緒に……」
「ええ、いいわ。偵察ね。私も気になって仕方ないの。だから、鬼窪くんも来て」
「ああ」
「待った。ガーネットも連れていってほしいんだ」
ソーニャがマルガリータと俺との会話の間に割って入ってきた。
そういえば、ガーネットは大女という体格以外よく知らないんだった。