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鋼雲剣??
力??
そんな力が神聖剣にあって、それを応用してハイルンゲルトは技を生み出したのか……。
だけれど、大食堂へ俺はトボトボと向かっていた。考えるのは後回しだ。
その時は、何はともあれ腹が減っていたんだ。
ソーニャもさすがに肌寒くなったのか、ベランダから出てきたようだ。白いパーティドレス姿で一緒に石階段を降りた。
まずは、大食堂へ着いたらレモンを齧って、頭をしっかりさせよう。
俺は、あの酸っぱい味が子供の頃から病み付きになっていた。
だけれど、俺はレモンは好きだが、リンゴは嫌いだった。子供の頃からリンゴのシャリシャリとした食感がなんだか馴染めなかった。
大食堂はここラピス城の地下にある。
すでに大勢の人たちでごった返し凄い熱気だった。銀食器やナイフやフォークの音と、至る所から美味しそうな匂いが豪快にしている。なかなかに広い食堂だった。ここは、寝室を除けるば、ラピス城では凄く落ち着ける場所なのに、だけど、今は不思議と大食堂の片隅だけが、氷のようにとても冷たかった。
そこにだけ、ガラの悪い凶悪な顔の男たちが食事をしていた。
その中央にいるのは……あの、オニクボだった。
俺がその前を通り過ぎようとすると、オニクボは軽く手を振ってネチネチと話し掛けてきた。
「鬼窪くんよー。お前。今まで俺の息子だったんだってなー。部下から聞いて驚いたぜ」
辺りに気まずいが流れ、殺気が充満した。
オニクボの連れだった黒の骸盗賊団は俺の顔を穴の開くほど見ていた。武器を構えるものまででてきた。
俺は腰の髑髏のナイフに手を伸ばして、オニクボの顔をマジマジと見つめる。
オニクボという盗賊団の頭領は、その凶悪な顔とは裏腹に、氷のように計算高い目をしていた。
見れば見るほど、その冷たい瞳からは、とてつもない冷静ささえ感じられる。
「う……」
俺は思わず言葉を失った。
気まずい空気と押し寄せる殺気がより一層強くなる。
ガラの悪い盗賊団の男たちは、武器を取り出し立ち上がってしまうものもでてきた。
一触即発。
だが……。
「まあ、そういうことにしといてやるよ。鬼窪くん」
オニクボはニッと笑って、盗賊団を見回した。途端に震えて武器を納める男たちが現れた。たが、オニクボの目は冷たくて、表情はいつまでも凶悪そのものだった。大食堂が急に吹雪が襲ったかのように空気が冷たくなった。みんなそれぞれの食事をピタリと止め。それぞれの面々に緊張が走る。
マルガリータとガーネット、そして、ヒッツガル師匠は特に警戒している。
大食堂の隅っこにいた通小町は、さっぱりわけがわからないといった顔をして普通に食事をしていた。
けど、白いパーティドレスのソーニャが大食堂へ現れると、皆ハッとして、大食堂は再び熱気を取り戻した。黒の骸盗賊団の男たちやオニクボも再び食事を始めた。
「どうした? オニクボ?」
「え、ああ。いや、なんでもないんだ」
あ、それよりも。
紛らわしいから……。
「ソーニャ。これから俺のことを功一と呼んでくれないか?」
「ああ、いいぞ。これからは夫婦だもんな」
その言葉に、俺が顔から火を吹くと、いつの間にかソーニャはシャンパンを片手に持っていた。