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俺はラピス城へ走るに走った。急いで森を突き抜けると、空気は森の木々の匂いから潮の香りへと変わった。
「見えた!! ラピス城だ!」
やがて、ラピス城の長い橋が見えた。だけど、その橋を埋め尽くすかのようなクシナ要塞の騎士の大軍も、俺の目の前に広がった。
あれ? え……?! あいつは?!
その橋への入り口を陣取っているのは、騎士でもなくソーニャとガーネットでもなく……何故か黒の骸盗賊団??
頭領のオニクボは、多くの盗賊を率いてクシナ要塞の騎士たちと激しい戦闘をしているところだった。
「盗賊を一人残らず海へと落とせーーー!!」
「落とすんだ!!」
「斬り伏せろーー!!」
「ふん! 早くこっちへ来い……」
大勢のクシナ要塞の騎士の旗が橋の入り口を囲み。俺には多勢に無勢とも取れた。だが、オニクボは冷静だった。
俺は神聖剣を構えて、その場に乱入しようと思ったが。
急に、剣戟の音や怒号や、血と潮の臭いを乗せた風に混じって、辺りに土の匂いが充満した。
クシナ要塞の騎士たちの後方。大砲などの重火器も備えている騎士もいる。その真後ろの地面が盛り上がってきた。
突然、土煙が巻き上がったかと思うと、大勢のクシナ要塞の騎士たちが急に倒れだした。激しい土煙が霧散していくと、大柄の盗賊団の男たちが騎士たちの背や首にそれぞれ斧で致命傷を負わしていた。
「くくくく。後は正々堂々ってやつだな。よお、鬼窪っていうんだな。お前も。俺たちがここを食い止めてやるから、お前はあのデカ物のクシナ要塞をなんとかしろ。王女様は、ラピス城でクシナ要塞の対策をしているってさ」
「ああ……わかった……でも、どうして?」
「いいから! 戻れ!」
凶悪な顔のオニクボに言われ、俺は渋々クシナ要塞の方へと戻った。
そうだな。
オニクボの言う通りだ。
あのクシナ要塞の進行を阻止しないと……ラピス城は終わる!