34
白い大理石の瓦礫が散乱し、無事だった壁面には数々の絵画が飾られている。けれど、その絵画はどれも……色々な戦火の中の鎧だけの絵だった。至るところのステンドグラスの大きな窓の脇にも頑丈そうな鎧だけが置かれている。
うっひゃああああー! そうだ! ここはガルナルナ城内だ!
守神アリテア王の城だ!!
ブルードラゴンもいない。
マルガリータとヒッツガル師匠もいない。
なんてこったーーーー!
ひょっとして、俺一人だけでこれから戦わなきゃならないんだろうか……。
俺は神聖剣を強く握り、キョロキョロとしだした。
さすがに心細かった。
敵陣の中で、俺一人だけだし。
この騒ぎに気がついた人たちって、一体? 何人?
「いたぞーー。ラピス城の騎士だ!」
「こっちか!」
「成敗ーー!」
向こうの廊下の十字路を埋め尽くすかのような、頑丈な鎧に身を包んだ騎士たちが、俺に向かってガシャガシャと走ってきた。
俺は深呼吸して、目を瞑った。
向かってくる騎士の攻撃を躱しながら、脇、首、手首、胴、頭を次々と軽いステップで、自然と身についている体捌きで、右、左、後ろ、斜めと神聖剣で斬撃を浴びせていく。かなりの血飛沫が舞って、神聖剣が血のりか何かで重くなってきても、俺は高速に斬り込んでいた。
やがて、向かってくる騎士たちが一人もいなくなった。
俺は直感的にこの程度の数ならぞうさもないと感じていたんだ。
「な……なんだこいつは……」
「つ、強い!」
「もっとも頑丈なミスリルの鎧をこうも簡単に斬るなんて!」
「怯むな! 囲めーーー!!」
一人の隊長と思しき騎士の号令と共に、大勢の騎士たちが俺を囲んでしまった。
「うん?」
俺は目を開けて、同時に目を疑った。
神聖剣によって深手を追って倒れたはずの騎士たちが……何事もなかったかのように起き出してきている。
不可解だった。
俺は困惑した。
だが、よく見ると、倒れていた騎士たちの身体が僅かに光を発している。
そして、騎士たちから歓声が上がった。
「聖女様だーーー!」
「聖女様!」
「通小町聖女様!」
「ふふふふふふふ……鬼窪くん! ここであなたは終わりよ!」
「??? え?!」
廊下の十字路の一つから、一人歩いてくる神聖な格好をした女の子に俺は驚いてしまった。
その女の子は、通小町 弥生だった……。 至る所に通小町の両手から発する光で照らされて、騎士たちが立ち上がって来る。通小町は負傷している騎士たち……それも物凄い数。を、全て治してしまった。
「うへええええー、通小町?? なんでこんなところに?!」
「鬼窪くん。学校の続きよ……秋野くんを庇っていたバツよ……」
そう。通小町 弥生も秋野をいじめていたんだ。