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西方領地 ガルナルナ国 王の間
床には数々の戦争の絵が描かれ、その中で中央に位置する絵には巨大な鎧が描かれていた。天井からぶら下がるシャンデリアは、おおよそ1500トンだ。周囲には多くの貴族、上位騎士、僧侶がいた。
そのシャンデリアの下で、一人の聖女と思わしき格好の少女が淡々と話している。聞いている王は、厳かな顔とは裏腹に非常に嬉しそうだった。
「王様。私、しっかりこの国の修道院で回復魔法を勉強しました。これで、王様は更に無敵です。そう、この世の誰よりも、どんな敵にも、どんな奴よりも。きっとあの鬼窪くんよりも」
「ふん! 最後の言葉がとても気になるが……良かろう。ここガルナルナ国の王として異世界から来たと申す通小町 弥生よ。この国の半分はやろう。だが……当然、戦争に勝ってからだ」
「承知しましたわ。ふふふふっ、あの正義感バカの鬼窪くんなら、ちょろいちょろいってもんだわ。この国もらったーーー!」
「……」
「……」
「……」
王の間がシンと静まり返った。
王様は聞かなかったことにして、パンパンと手を叩くと、次の謁見まで小町を控え部屋へと戻した。
控えの部屋へと戻った通小町 弥生はほくそ笑む。
「ふふふふふふ。あの鬼窪くんがねえ。これはこれは……化学も現代文も歴史ダメ。体力しかない平凡学生が……この学校一の秀才に敵うわけないじゃない。この国で立派に出世して……いずれは王女に……ふふふふふふふふふ。私もだけど、転生したこと後悔させてやるわ!」
ガシャっと鎧の音が部屋の扉からした。
「あのー、聖女様……王の間に全部聞こえていますよーー」
親切な兵士が教えてくれた。