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でも、当然。魔法の方向さえ間違えなければだけど……。
そういえば、魔法の方向で思い出したけど、今頃ラピス城は無事だろうか?
もう、ここへ来てから一日は経っているんだ。
うーん。元の世界では一週間は優に経っているはずだけどな。
俺は親が何とかしてくれるだろうと思って、学校を諦めた。
けれど?!
留年はしたくないな。
あれから秋野は無事だろうか?
俺は木の実を食べながら、そんな仕方がないことばかり考えていた。
「ふーむ、それであの西方領地のガルナルナ国へか……」
「そうですよ。お師匠。ラピス城を攻めてきた敵は、最高の守神アリテア王ですよ」
「それで、私の魔法の力を?」
「いえいえ……はっ。 ええ! お師匠の強力無比な魔法の力で……お願いします!」
「あ……ああ。しょうがないなあ」
木の香りと一緒にマルガリータの食べていた豚の丸焼きの匂いが鼻に入った。
うん?
どうやら、木製のテーブルを囲んで、俺が考え事をしているときにマルガリータとヒッツガル師匠が話を進めていたんだ。
「ねえ、鬼窪くん。お師匠ならきっと守神の鎧を楽に打ち砕けるわよ」
「ふええええ、そうか。そうなのか。……それなら俺は何もしなくていいのか?」
だが、急に隣に座っているマルガリータがニッコリすると、俺の小耳に小声で話して来た。
「って、そんなわけないわよ。お師匠の魔法……凄い魔方向音痴なんだから。あなたが神聖剣で倒すの。アリテア王を……」
「うん??? 言っていることが違うぞ?? あのさー、なら、ヒッツガル師匠って……」
そして、次の言葉を言おうとすると、俺の口をマルガリータが片手で封じた。
「ふがっ!」
俺はヒッツガル師匠は超強力なお飾り的な存在なのでは? と言おうとしていたんだ。でも、マルガリータなりに何か考えがあるんだろう。
ガルナルナ国。
一体、どんなところなんだろう?
明日にはたぶん見れるんだろうけど。
その国を……。