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そういえば、水の神殿から地上へ出てから、風呂へ入りたかった人は俺だけじゃなかったんだな。
「いたたたた……。なあ、マルガリータのお師匠ってどんな人なんだ」
未だ。平謝りしまくったり、真っ赤になってしまったほっぺと頭をしたりして、顔を摩りながら俺はブルードラゴンの背に乗り、マルガリータに聞いた。マルガリータのいつも空を飛んでいる大きな箒は今は、ドラゴンの背に括り付けてあった。
「へ? え……ああ。言ってなかったわよね。うーん。尊敬はしてるんだけど……一言でいうとどこかがすっごくすっぽ抜けてるお人だったわね。あ、そうだ。どうせ西へ行くならヒッツガルお師匠様も連れていって御助力を願ってみましょうよ」
「そのヒッツガル師匠って、強いのか?」
「ええ、私なんて足元にも及ばないわ……あ、でも。まったく役に立たないかも知れないわね」
「???」
ブルードラゴンは前方を向いてグングンと遥か西へと飛んでいく。だけど、俺たちの言葉を聞いていたのか下方を向くようになった。速度は徐々に落ちていって、体で受ける風の抵抗が弱まってきた。
しばらくすると、草木も少ない荒れ果てた地に、ポツンと一軒の赤い屋敷があった。その屋敷は煙突から煙を立てている。
そういえば、もう昼時だ。ラピス城からブルードラゴンに乗って随分飛んだな。
ブルードラゴンが急にその赤い屋敷へ下降していった。
俺たちに気を使ってくれたんだ。
俺は中学の時から体力には自信があったが、俺の後ろに座っているマルガリータは疲れたのか今では無言になってしまい。ひたすら俯いていた。
こう見ると、この人ってなんだか見た目は陰キャなんだなあと思えた。でも、何故か実際の性格はその逆だった。