20
俺は苦しくなって口を抑えながら水の神殿を遠目で凝視すると、神殿の中央に小さな光を見つけた。そして、そこへ通じる崩れかけた正門があった。
闇雲に泳いでいたソーニャの手を取り、神殿の入り口を目指す。
(この神殿には……強力なドラゴンが今も封印されているんだ。ひょっとしたら、かなりヤバい戦闘になるかもな)
俺は内心自信があった。
また、勝てるんだって……。
ハイルンゲルトにお礼を言わないとな。
神殿の入り口は、ヒビの入った巨大な石の門だった。所々に倒れた石柱があり水泡が至る所から湧き出ていた。
なんだか神殿自体が呼吸しているかのようだった。
さすがに海の水が冷たくなってきて、息が苦しい。急いで石の門を潜り抜けると、あとはしばらく必死に一直線に神殿の奥へと向かうだけとなった。
石壁も石の天井も光源がなくて、うす暗かったが。ただ、真っ正面に小さな光源があった。
ソーニャはいつの間にか俺の右腕を掴んで泳いでいたが、前を指差した。
俺は神聖剣を握り、前方に現れた光源を見つめた。
それは台座に鎮座している。幾重にもある光の帯で覆われた巨大なドラゴンだった。
(デカい!! この台座の面積だけで俺の学校の体育館が埋まるんじゃないか? それにドラゴンも!! デカいぜ!!)
俺は台座に近づくと、周囲に水泡が巻き上がった。
(うん? このドラゴン……呼吸しているんだ?! だけど……)
ブルードラゴンがこちらに鋭い目を向ける。そこは体育館並みの水没した広い空間だった。水は冷たくて、俺は身を引き締めた。ブルードラゴンは俺の顔を見て何故か笑っているような感じがしてきた。
俺も自然に頷き。神聖剣を構えると、ブルードラゴンはコックリと頷いた。俺は勢い良く幾重にもブルードラゴンを覆っている光の帯を一刀両断にした。
大量の水泡と渦潮が発生した空間で、俺の隣にいたソーニャは冷静沈着だった。