01
轟々と音のする水の流れの中に俺は居た。息継ぎもできずにもがくだけだった。水の流れは激しく。目を開けた俺は元居たところから、数メートルは流されていることがわかった。
その時、背中に鈍い音と共に痛みが走った。
何か固いものに背中があたったようだ。俺は必死にその固いものを両手で掴んだ。どうやら、触ってみて見た感じは、それがボートのようだということだった。
必死にボートのようなものにしがみつく。
ボートはゆっくりとだが前進していた。
肩にオールがぶち当たりそうだった。
息が苦しかった。必死にボートから身体を少し離して、上へと泳いだ。
どうしても息継ぎがしたかった。
いや、生きたかった。
「ぷはっ!!」
俺はどうやら、海面に顔を出せたようだ。辺りは海に囲まれ、遥か上空には一本の橋が掛けられていた。
かなり長い橋だった。
その橋の向こうに綺麗なお城があった。
俺にはドイツのノイシュバンシュタイン城を思い起こさせた。
あれ?
そういや、俺はいじめのリーダーに向かって、確かなんか叫んだんだよな??
???
なんで、こんな海の中に??
独りだけで??
さ、寒いし!
心細いし!
一体! 俺が何したっていうんだよーーー!!
しばらくボートにしがみついていると、前方に海中に沈む石の城壁が見えてきた。そこまで泳いで、息継ぎのため城壁を伝って海面まで泳いだ。
「ぷはっ!」
ようやく水の中から顔を出すと、目の前の城壁に上の橋へと繋がる大きな梯子が付いていた。
うわーー!
長いなあ……。
よし!
俺は学校では陸上競技会にでたほどの実力者だ。
体力には自信がある!
城壁の背に伸びた梯子を登り切ると、そこは青い色の鎧と普通の鎧を着た大人たちが戦っていた。でも、少し違った。その中には白い鎧の少女が戦っている。
「あ、危ない!!」
俺は咄嗟に少女を脇にどけた。
途端に一本の矢が飛んできて、少女のいたところの地面に突き刺さった。石造りの橋の地面にヒビが入ったが、少女は俺の顔を見てプッと笑って「そんくらい鎧で弾けるわよ」と言った。
よ、鎧?!
ここは、どこなんだ?!
何故だ!
な、なんで?
言葉が通じるんだ?
見たところ外国人のようだけど……。
でも、女の子が無事で良かった。