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俺はありったけの腕力で神聖剣を振り上げ、オニクボへの懐へ飛び込んだ。
上段から、そのまま斜め下へと剣を振り下ろすと、オニクボは髑髏の短剣だけで長剣である神聖剣を楽に弾いた。
オニクボが俺の目の前でフッと消えたと思ったら、その次は目にも止まらない速さで、俺の脇腹に入っていた。
「終わりだよ……鬼窪くん……」
音速での激しい火花が辺りに飛び散った。
気がつくと、クシナの斬功狼が、俺の喉を掻き切ろうとしたオニクボの髑髏の短剣を防ぎ、間に割って入っていた。
「フン!! この程度の速さか……まだまだだな」
俺に加勢してくれたクシナは斬功狼を正眼に構えた。
クシナの後ろには、アリテア王とサンポアスティ女王も続いてきた。
「黒の骸盗賊団の阿呆どもは、グレード・シャインライン国のソーニャ女王たちに任せるのじゃ」
「余の鎧は何人たりとも傷はつけられない……たかだか、賊だ。オニクボよ。ここで死んでゆけ」
サンポアスティ女王とアリテア王がそれぞれの武器を構え直した。
「ふっふはははははは! 四カ国の王や王女や皇帝が寄ってたかってとは、大歓迎だなー!! 大変光栄だぜ!! なんてな! じゃあ……いくぜええええーーー!!」
オニクボが俺たちへ飛び掛かった。
だが、超高速のオニクボの動きに、反応できるのは、クシナだけだった。真っ先にアリテア王は剣を振り下ろす間もなく。首筋に髑髏の短剣が突き刺さり、サンポアスティ女王は、グレード・パニッシャーを微動だにしない間に腕を切り裂かれた。クシナは斬功狼で応戦するが、当然体力が持たなかったのだろう。クラスド・エドガーの城での攻囲戦でスタミナを使い切っていた。
クシナもやがてオニクボに倒され、稲光と共に、一本の落雷が俺の傍の地面へと落ちてきた。
鋼雲剣の激しい爆破音。
飛び散る血潮。
そうか……。
これで……俺は。
元の世界へ戻れるんじゃ……ないだろうか?
一本の鋼雲剣の光の矢がオニクボの胸元を貫いていた。
同時にザスッ。
と、いう音がした。
俺の胸にも髑髏の短剣が突き刺さっていた。
「鬼窪くんよお。これでお前は元の世界へ戻れるんだろ? 達者でな! 楽しかったぜ!」
「ううっ!! ありがとな……オニクボ……」