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俺は早朝にクシナ皇帝が意識を取り戻したと聞いて、病室前にいる従者に挨拶をしにいった。俺一人でクシナ皇帝に見舞いにきたんだけど、隣にはソーニャもいる。
「大丈夫か? クシナは一体どうしたんだ?」
「ああ、鬼窪王。クシナ皇帝から……お話があるとのことです」
白と騎士の国へ行ってから、重傷を負って倒れたクシナ皇帝は、グレート・シャインライン国王の王城の広大な病室で横になっていた。当然、要人用のベッドと部屋だ。
ベッド付近には、この国の隅々から一夜にして集められた医学者や占星術師。ヒーラー、シャーマン、薬学者に、医学者よりも薬草に詳しいといわれる木こりの人々が待機していた。
クシナ皇帝は漆黒の鎧こそ着ていないが、紫色の病院服なのだろうか。簡易な薄着だけを着ていた。
「すまないなあ。鬼窪王よ。わざわざこんなところまで、足を運んでくれて……。ふふふ、今になって思えば、あの時の鬼窪がグレート・シャインライン国の国王になるとはな……運命とは意外と真っ直ぐなところがあるものよ。……よく聞け。鬼窪王よ。クラスド・エドガーには気を付けるんだ。もっとも危険な存在になっているんだ」
クシナ皇帝が酷い皮肉を言うような顔で笑ってから、少しだけ顔を歪めた。
俺は心配して、ソーニャと顔を見合わせる。まだ痛いところがあるのだろう。
「大丈夫か? クシナ! もう少しだけでも安静にしていろよ」
「そうだ。もうしばしの安静を。クシナ皇帝が倒れたというだけで、従者や帝国の人々が不安がるぞ」
「ふふ、時間はない。いつも私にとっては早歩きをするんだよ。時間という者は……」
???
「あ、でも。警戒なんてしても、取り越し苦労になるぞ。大丈夫だぞ。クラスド・エドガーならとっくに倒したぞ」
「ふん! ならば、会ってみるがいい。もう一人のクラスド・エドガー。国王の方にな……」
「へ??」
「?! 聞き間違いか?! クラスド・エドガーが二人いると聞いたぞ?」
俺とソーニャが驚いたが、周囲の人々の一部は下を向くだけだった。