08
俺の親父って盗賊団の頭領だったけか……? 普通のサラリーマンだったはずだ。それも会社に蟻のように働かせられていて、いつも泣いていたっけ。確かに、いつかでっかくなってやるっていってたけど……。親父もこの世界へ来て盗賊団の頭領にでもなったんだろうか?
「へ? はあ? 頭がすごく混乱するぞ???」
「それでは、お願いしますね。鬼窪くんは、正真正銘の黒の骸盗賊団の頭領の息子なんです。これからすぐにラピス城へ向かってください。私と鬼窪くんは空を飛んでいきますから」
「へ? へ? え?」
勝手に話をずんずんと進めるマルガリータの横で、俺は混乱したままだ。
髑髏の燭台の炎で盗賊団の男たちの顔が見えるが、どれも体が震えてしまうほどの凶悪そのものだった。
俺はなんでこんなところにいる?
なんで、盗賊団の頭領の息子なんてやっている?
今まで普通の高校生だったんだぞ!
それよりソーニャは……。
「あの。お頭……その前に一ついいですかい? だいぶ前に元聖騎士だという老人を牢屋へぶち込んだんでやすが……ひょっとして、お仲間だったでやすか?」
「え?! 本当に? きっと、その人は千騎士最強といわれた元四大千騎士の一人。ハイルンゲルトだわ」
それから、じめじめとした地下へと案内された。肌寒くて、学ランの上着がまだ乾いていないからか、くしゃみをした。
俺は、マルガリータに小突かれながら盗賊団を率いて灰色の廊下の奥へと行くと、真っ暗な石造りの牢屋があった。中を盗賊の一人から手渡された松明で照らすと、門扉も壁も石でできていて一言でいうとかなり堅牢な牢屋だった。
その牢の隅にある木でできた小さなテーブルに、ぐったりしている白い鎧の老人が両手を投げ出し顔を伏せていた。