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29.ラングドルフ領まで行くわよ

「リリア。マーガレットの遺体は、ラングドルフ領に埋葬されているのよね?」

「え? は、はい!」

「レオン。マーガレットが亡くなって、およそ十五日ほど。あと、死因は頭が割れるほど強く地面に叩きつけられたこと。そんな遺体でも、復活させられる?」

「心配するな。骨だけになってても動かせられる。四肢がくっついていればな。離れ離れになってたら繋げてやる。……腐敗はしてるかもしれないから、臭いは我慢してくれよ」

「そんなこと、気にするものですか」


 マーガレットは親友。その程度がなんだ。

 私の意図をレオンは正しく汲み取ってくれたらしい。


「ルイが望むならやってやる。お前の親友の死体を復活させて、真相を暴かせてやる」

「ええ。行きましょう、ラングドルフ領へ!」


 私は既に立ち上がっているけど、差し伸べてくれたレオンの手は強く握ったまま。

 お互いに見つめ合って、笑顔を向けた。


「あ、あの! おふたりは何を盛り上がってらっしゃるのでしょうか!? 遺体とか霊とか、ちょっと不穏な感じがするのですが!」


 そうだった。リリアは、レオンや私の体質を知らないのだった。


「直接見てもらった方が早いよな。ここじゃ客の迷惑になるから、二階に行こう」


 ローブの内側からピンク色の粉の瓶を取り出しながらレオンが立ち上がる。



 その少し後。


「ひいぃっ!? な、なんですかこれはー!?」


 霊の群れを見たリリアの悲鳴が、二階に響き渡った。


 私も数日ぶりに見たのだけど、さっきレオンが言っていた通りだった。明らかに数が増えて、靄が濃くなっていた。

 そんなに、私のそばにいるのが心地良いのか。


 リリアにこちらの事情を話し、マーガレットを一時的に蘇らせて彼女の死の真実を伝えてもらう考えを伝えた。

 ニナのお父さんは秘伝のレシピを手書きしてもらったそうだし、同じようにさせられるはず。


「マーガレット様は、今もこの近くを彷徨っているのですか……それは、安らかに冥界へ行ってもらわなければいけませんね」


 リリアも落ち着きを取り戻し、マーガレットがいると思われる虚空を見つめながら言う。

 たぶんそこにはいない。私にもわからないけど。


「わかりました! 皆様に協力します! 一族の墓まで案内しますよ! マーガレット様の埋葬位置は把握していますし!」


 リリアはたとえ主人が死んでいたとしても、安らかに送るまでは仕えるようだ。侍女の鑑だ。


「問題はラングドルフ領まで行く手段と理由だな」

「理由?」


 私の部屋で話し合いの続き。


 ちなみにニナは給仕に戻ってもらった。これ以上仕事をサボらせるのも問題だ。


 レオンが無遠慮に私のベッドに座りながら言ったことに、私もリリアも首をかしげた。

 理由ってなんだ。マーガレットを復活させるのじゃないのか。あとクソガキはベッドから降りろ。


「領の間に検問が敷かれてるか、そこまでいかなくても見張りがいる可能性がある。もちろん、ルイを探す目的で」

「本当に?」

「確かに……お城の中でも問題になってるそうですよ! どうしてもルイーザ様が見つからないと!」


 リリアに補足されれば、信じるしかない。


 そうなんだ。私も髪を切って化粧も変えて、人通りの多い時間帯は外出を避けてたからな。

 数日もすれば奴らは諦めると思ってたけど、そうでもないらしい。


「とりあえず王都の中にいると仮定して、そこから出る道に人を配置する話も出てるとか。既に配置が終わってるかもしれませんね!」

「王都から出る道で間違いないのか? 王都の範囲も曖昧だし、道は多いぞ。主要な通りに人を置くってことかな」

「正確なところは、私にもわかりません。もしかしたら王都ではなく、領の境目かもしれません!」

「そっちの方が、主要街道は限られてるし配置できる人員も少なく済むか」

「もちろん、全部の道に人を配置する予定はないと思います。規模や、どこに人がいるかの正確な情報は、私の方で探りますね! 任せてください!」


 よくわからないけど、私はまだ探されてるらしい。


 街から出ようとして捕まるのは御免だ。


 じゃあ、見張りを見つけたら引き返して、別の道を探せばいいのかといえば。


「そう簡単じゃない。道の途中で急に引き返すのを見られたら、ますます怪しまれる」

「なるほど」


 ガキなのに頭いいな。ムカつく。


「最初から見張りがいなさそうな、細くてあまり使われてない道の見当をつけるって賭けをしてもいいけどな」

「その賭けが外れたら、私は終わりよ」

「そうだなー」


 こらクソガキ。愉快そうに笑うな。私には笑い事じゃないのだから。

 探してる主体が何にせよ、王家と公爵家それぞれを侮辱した私に対する処分があるならば、重いものになるだろう。


「心配するな。見張りがいないような場所を選んで行く。もし誰かに見つかっても、切り抜けられる策は用意してやる。それが、さっき言った理由ってやつだ」


 レオンは愉快そうな顔をしたまま言った。

 何が愉快なのかと言えば、たぶん私が捕まって破滅することではない。


 私を破滅させたがってる誰かの裏をかけることが愉快なんだ。


「どうやるつもりなの?」

「神父様に同行してもらおう。神の教えってのは、それなりに尊重されるべきだからな。一介の使用人とか兵士なら簡単に誤魔化せる」


 その神の教えを、人を騙す手段に使おうとするレオンは、やっぱりクソガキだ。

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