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- VI -

「・・・沙希、お前は神や天使の存在を信じるか?お前の言っていた宇宙や惑星、それと僕たち人類が『彼らによって創り出されたもの』であると思うか?」


「いきなり何?…うーん、私はロマンチストだから信じる方かな。そう思う方が美しいじゃん!」


僕は唐突に質問を投げかけていた。彼女にこんなことを聞いてどうしたかったのか…自分でも分からない。『未知のことを知りたい』が一致しているだけで仲間意識でも芽生えていたのだろうか?それとも、またあの少女の時と同じように幼なじみのこいつにも縋ろうと焦っているのか?彼女の答えをカンニングしたところで僕自身の答えが見つかるわけでもない。それこそ『偽りの僕』でしかないはず。こんなことは分かっている…なのになぜ?

ただ単に僕の平和を乱すこいつに意地悪がしたかっただけ…そう自分に言い聞かせる方が落ち着く。


「でもさ、信じるにしても信じないにしても、私たちは今ここに存在している。これは事実なわけだよ。宇宙や惑星だってそう。考えたところで、鶏が先か卵が先かみたいな不毛な議論だと思わない?不確かな事を案じているよりも確かな事をどう歩んでいくか。私たち人類にとってはこう考える方が現実的じゃない?」


「・・・なるほどな。お前からそんな真面目な意見を聞けるとは思わなかったから驚く。」


「失礼な人ね。アンタより真面目に勉強してますから〜!!拓海とこうやって話をしているのも幼なじみという事実があったからなわけじゃん。私たちは運命に惑わされながらもそういった事実の積み重ねで今がある。なら、その一つ一つを大切にして生きていく方が価値あると私は思うなあ。」


沙希の意見は確かに同意できる。理解できる。神が僕らを創り出し、天使たちが僕らの悪行を諫める。仮に人類側の僕らがそれを知ったところで何が出来る?バベルの塔を作り上げたところで結局は無力化されて徒労に終わる。下界に住む者たちが天界に侵攻できるわけもない。運命に抗っても無意味である。僕ら人類が唯一許されていることは『事実の積み重ね』。その中で生きていくのが現実的であると彼女は説く。

でも腑に落ちない。僕の心はそれでいいと受け入れられない。なんとしてでも神や天使に抗いたいのだろうか?あの少女に完成した僕の曲を聴いてもらうまでは諦めきれずにいる。ここで引くほど甘くはない。


「私は十分語ったわよ。拓海、次はアンタの将来を教えなさいよ!」


「はあ・・・僕の将来なんて何もないさ。ただ『僕はなぜ僕としてこの場にいるのか』を知りたいんだ。僕は天使はこの下界に今もいると信じている。今は手探り状態だけれど、いつか僕の探し物はきっと見つかる。そう信じているんだ。」


「何それ?・・・クスス…」


「何がおかしいんだ!」


「ごめんごめん。ついつい…なんか面白そうだから私は拓海を応援するよ。もしそれが見つかったら私にも教えてね。・・・でも講義はちゃんと受けに来なさいよ。今の将来が白紙なら尚のこと。それとこれとは話は別だからね!」


つくづく癇に障るやつだ。幼なじみのこいつに否定はされていないだけマシと見るべきかな。

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