バカな子ほど可愛い?
インドネシア人です~!日本語はまだ見習い中ですので、文法に問題が多いと思いますが、ぜひともよろしくお願いいたします!!
「神谷ユキ。前へ――」
先生がそう呼んだ。
神谷ユキ。彼女の姿を一言で表すなら、それは『清楚』である。
整った顔立ちで、大きくまっすぐな瞳。腰まで伸ばした彼女の長い黒髪はその細い足が踏み出すたびに揺れる。
白魚のような指で彼女はテスト結果を受け取った。
その顔に誰もが振り向くほど綺麗な笑みが浮かんでいる――それほど彼女は魅力的だ。完全、完璧におとぎ話にもでる白雪姫。
間違いなく、彼女こそこの学園のマドンナで、高嶺の花――
「また零点だ。放課後、生徒指導部に来い」
「ほええぇぇぇ~っ!?」
外見を裏切ったかのような声を上げた神谷ユキ。
――どうしようもないバカじゃなければの話なんだが。
「はぁ~」とため息をつく。今日も忙しくなりそうだな……そう考えながら、俺は窓の外に視線を向けた。
授業が終わった後、チャイムの音が鳴った。
「東吾君たすけてぇ~!」
案の定、神谷ユキは俺の席に近づいた。彼女の右手に先のテスト結果が握られ、やはり大きな卵が赤インクで描かれている。
「助けてって言われても……そもそも、俺がさんざん勉強手伝ったくせに、いったいどうやって零点とれたんだよ?」
「それは……えっと……たぶん、テスト中にかけてたメガネが――」
「……メガネ?神谷、確か視力は良いはずじゃ――」
「うん」
「じゃなぜメガネの話しに?」
「メガネ掛けたら頭よくなりそうだとおもわない!ほら、スマートな人ってみんな、メガネかけてるんでしょ?ならあたしもかけて『INTアップ!』みたいな――!」
バカか。
「バカか」
「酷!?」
「すまん、本音もれた」
「それ、もっと酷くないっ!?もう――っ!!」
清楚で優雅な外見を裏腹に、神谷は俺の肩を拳で何回も叩いた。
彼女の突っ込みを無視し、俺は続く。
「それで、メガネがどうした?」
「それがね、テストが始まる寸前はね、メガネかけるとなんか自分の目がすっっごく回ってて、文字がよく読めなくて……」
「ちょっと待った」
神谷の話に俺は差し込んだ。
今、なんていった?目がまわるって?
いや、まさか。
「そのメガネ、偽メガネだったんだよな?」
「?ううん、パパのメガネだったんだけど、それがどうしたの?」
俺に聞かれて、神谷は首をねじ答えた。
そのまさかだったのか……
「……別に」
「そう?……とにかく大変だったのっ!右左分からないぐらい目が回ったのよ――でも、『こんなちっぽけなデバフぐらいで、ユキちゃん負けないぞぉっ!』って自分に応援し、何とか問題全部解いたの。ふふん、我ながらいい作戦を考えついたのねえ!」
「そんなにいい作戦なら零点にはなるずながいと思うんだが……ん?まさかと思うが、テストのあと、チェックせずにそのまま提出しちゃったぁ~ってわけないよな?」
「もちろん――したのよ。あたし、メガネ様の神力に信じるんだからっ!」
「……バカだ」
「ええっ……!?」
「いや、バカは可哀想だから――大馬鹿だ」
「それはもっと酷いってばぁ――っ!!」
そういわれて、神谷は頬を膨らませてながらポンポンと俺をたたく。
そしたら、別の方向から声が聞こえた。
「ほどほどにしなさい、東吾君。神谷さんがミスするのもむりはないわ。何せ、この私もミスを犯したもの」
「久川……」
俺は彼女の名前を口にした。
久川美奈子。見た目からして、彼女はガーリッシュ系な美女で、違う意味で神谷ユキにも負けないぐらい魅力的な人である。
茶色の髪は青いシュシュでサイドテールにまとめ、化粧は薄い寄りのナチュラル。制服のうえに上着は着ていないが、代わりにカーデを腰に巻いていて、妙に短いスカートを際限なく隠す。
放課後女友達と一緒にタピオカを飲んだりマグロナードやファミレスで立ち寄ったりするタイプの、のんきで話しやすい人に見える。
間違いなく、彼女こそ女子生徒全体の女王――
「みなこちゃん~!」
「だってほら、また百点とったのよ、百点!神谷さんみたいなバカのほうが、友達つくるのは簡単だというのに」
「みなこちゃんっ!?」
はぁ~とため息をつく久川美奈子。
――本人があんなにも鋭い舌じゃなければの話なんだが。
久川に救済を求めた神谷は、その言葉にとんでもないショックを受け、涙目でゆかにおちた。
久川に悪気はないが、それは流石に痛い。
まぁ、神谷のことだ。すぐに復活するだろう。
「零点で友達は作れないんだと思うんだが……」
と俺はつぶやいたが、それが聞こえたのか、久川は口を開いた。
「東吾君――知ってるか?人間はね、生まれつき社会的動物よ。群生動物なの。群生動物の特徴は個人の弱さを数で埋めるのよ。一匹一匹では弱いから、仲間を集め強くするの。人間も同じ。一人一人に弱点や弱みはあるけど、皆と一緒ならなんでもできる。月までたどり着くのよ、私たち。これが三本の矢てやつよ。でも――私は違う。私に弱みなどない。私は美人で頭もよくて金持ち、将来も安定している。そう、私はもう勝ったんだ――この人生というゲームに。でも、弱みがないからこそ、この久川美奈子には仲間がいない、孤独な存在になったの。それは――共通点がないからだ。他の人には弱みがあるのに、私にはない。私はその弱さ――バカさが必要なんだ!なぜなら私は友達がほしいからよっ!」
……バカが一人増えた。
神谷が「おおぉ~」と口にして拍手する所に俺は面食らって右手を額に置くが、久川はこれでもしゃべり足りなかったかのように続けた。
「この格好も、友達作りのためにするのよ。私が調べる限り、理屈は分からないけど、オシャレでサイドテールの女の子は大体友達が多いらしいの。見た目は中身を映すというもので、私も同じ格好したら、友達候補もどんどん降ってくるに違いないわ」
「それ、あたしも同じ!ママに『ユキを優等生にして』ってお願いしたら、こんなに綺麗にしてくれたの!コスプレ?ってママはそう言いうんだけど、あたし本当に優等生になった気分で、頭が良くなっていく感じがするのよね」
「ならば私たちは同類――になるわね」
「そうよね!」
「バカさが――ね……」
思わず突っ込んだが、あのバカ二人は俺を無視し仲良く握手した。
そういえば……
「神谷、生徒指導部に行くはずじゃ?」
「あっ、忘れてた!先生に殺されちゃう!」
そう言って、ぱっと立ち上がった神谷ユキ。
自分の席に近づき、鞄を手に取り、教室のドアに急ぐ――
が、廊下に出る前に、神谷は俺に笑顔を向ける。
「またね、東吾君」
鈴みたいに響く彼女の声が俺の耳に入る。
彼女のその姿は、女神が地上に舞い降りたように、神聖で麗しゅう。
それを見て、ドキッと胸のあたりが痛む。
「お、おう」
なんとなく返事した俺に、神谷は「ふふ」と笑って立ち去る。
俺の異変に気づき、久川は問おう。
「どうしたの、東吾君。顔赤いよ?」
「べ、別に……」
「ふ~ん」
俺の顔を見つめ、いたずらをする小悪魔のようにニヤリと笑う久川美奈子。
その笑みに俺の胸がゾクゾクし、頬が熱くなるのを感じる。
まったく、こいつらは――バカな子ほど可愛いな。
ここまで読んでくれてありがとうございましたっ!!