捨てられて
男の胸に抱かれ、馬で森に連れてこられた俺。
マジでヤバイ。本当に捨てられてしまう。
せっかく貴族の家に産まれたのに、こんなことになるなら貧乏農家のほうが良かった。
「ここまで来れば良いだろう、産まれて来てすぐなのに可哀想だが、俺も仕事でな。せめて苦しまずにあの世にいけるように、魔物に見つかりやすい所に置いていってやるからな」
男が俺を胸から下ろし、切り立った崖にある岩の上に、そっと置いた。
(すぐ見つかってすぐに食われて死ねってか! いやだー! こんな崖の上に置くな! カラスに見つかるだろうが!)
「じゃあな」
(じゃあなじゃねーよ! 置いてくな!)
そう喚くが、男には俺が泣いてるようにしか聞こえてないだろうなぁ。
(このままここで魔物に食われるのか? あの糞女神め! 適当な事しやがって! 見てるなら出てこい!)
『うむ、見てるよ。いきなり大変そうだねぇ』
と声が聞こえた。
あの忌々しいクソ女神だ!
(あ! 出やがったな糞女神! なんだよこれ! レアスキル二つって、ハズレらしいじゃねーか! 聞いたことないスキルだと言ってたぞ!)
『私は強力なスキルだとは一言も言ってませんけど?』
(……確かに言って無かった……だが、普通強いスキルをくれるもんだろうがっ!)
『レアスキル以外もあげたし、貴族の家に生まれさせてあげたし、約束は守ったでしょう?』
(魔力が無いから使えないと言っていたのだが?)
『魔力くれと言われてませんから』
(お前、ワザとだろう?)
『……いえいえ』
(最初の間はなんだ?)
『じゃあ、五歳までは無事に生きられるようにしてあげます。特別ですよ? それまでに生きる力を身につけてくださいね。では、もう会うことはないでしょう。頑張って下さいね』
(あのロリ巨乳ババァ、絶対ワザとだ。見返してやる!)
『勿論ワザとだよ。いっぱい苦しんで私を恨んでね。その恨みが私の力となるから』
(やっぱりワザとか! てめぇ覚えてろよ! 絶対仕返ししてやんからな!)
『出来るもんならやってみな! 楽しみにしとくよ。じゃあね〜』
(チキショウ! 絶対強くなってやる!)
とりあえず、気配隠蔽で見つからないようにしないとって、どうやるんだ気配隠蔽って?
もしかして魔力が必要なの?
それっぽい! ダメだ詰んだ。
とりあえずここから逃げないとだが、身体が上手く動かねえ!
そりゃ今日生まれたばっかで、動けるわけねぇじゃん!
ってカラスが寄ってきたんだが?
とりあえず死なないようにするって言った、あのクソ女神の言葉を信じるか?
だが、信じられるのか?
とりあえず、カラスの足掴めばどこかに移動してくれるかな?
こんな崖の上より、森の中とかの方がいいのだが。
とりあえず何か食べ物を!
初乳も貰ってないんだぞ俺は!
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