第97話「金髪美少女は納得できない」
「ねぇ、陽君。どうしてそんな状況になったの？」
「やめろ、話を掘り下げようとするな」
笑顔で小首を傾げた凪沙を陽は睨む。
凪沙が良くないことを考えているのは明らかなため、余計なことを言わないように止めたのだ。
「でも、私は説明を求めます」
「別に、やましいことがあるわけじゃないからな……」
凪沙を止めると、真凛が頬を膨らませながら袖を引っ張ってきたので、陽は困ったように首を横に振った。
どちらか片方でも厄介なのに、凪沙は面白がって聞きたがるし、真凛は拗ねてしまっている。
陽は手を焼きそうな状況に困ってしまう。
「これは、真凛ちゃんも同じことをするしかないね？」
陽の制止の言葉の介はなく、凪沙はチラッと意味ありげな視線を真凛に向ける。
すると、真凛はコクンッと頷いた。
「はい、そうですね――って、あれ!? それはおかしくないですか……!?」
「ちっ、後少しだったのに」
真凛が我に返ると、凪沙は残念そうに舌打ちをした。
それにより、真凛は再度頬を膨らませる。
「凪沙ちゃんはどちらの味方なのですか……！ 私を嵌めようとしないでください……！」
「でも、やると陽君が喜ぶかもよ？」
「――っ。そ、それでもしません……！」
一瞬心が揺らいだ真凛だが、凪沙の誘いに負けず断った。
どうやら恥ずかしさが勝っているようだ。
「ふっ、秋実さんはまだまだね」
「なんで根本さんは勝ち誇ってるんですか……！ 女の子なら慎みを持ってください……！」
佳純が勝ち誇ったような笑みで笑うと、真凛は佳純に喰いついた。
「私、陽にしかそういうことしてないし。他の男子には秋実さんと比べてよっぽどガードが固いけど？」
真凛の発言が気に入らなかった佳純は、挑発するように真凛の言葉を否定した。
わざと真凛のことを持ち出したのは、意趣返しみたいなものだろう。
「わ、私、他の方にむやみに肌を見せたりしてませんよ……！」
「ニコニコとご機嫌取りしてるじゃない。あれで期待する男子がどれだけいるか」
真凛は男子から憧れの女の子なため、彼女に優しく接しられるだけで期待を持つ男子は多い。
それどころか、笑顔を向けられるだけで自分に気が合うかもと勘違いしている男子も多かった。
佳純はそのことを言っている。
「そ、そういうつもりで接しているわけではないので……！」
「あなたがどういうつもりであろうと、周りから見たらそう見えるのよ」
「むぅ……！」
真凛は先程よりも一段と頬を膨らませてしまった。
それだけ佳純の言っていることが気に入らないのだろう。
そんな二人の間に、陽は慌てて入った。
「ま、待て待て。なんで言い合いを始めてるんだよ……」
「だって、根本さんがいじわるを言うんですもん……！」
「私は事実を言っただけじゃない」
「違います……！」
陽が間に入っても火花を散らす二人。
さすがにまずいと思った陽は、凪沙に視線を向けた。
「とりあえず、この店での撮影は後だ。二人が落ち着いたらもう一回来よう」
「そうだね、撮影の協力をお願いした以上白紙に戻すのは相手に失礼だし、そうしたほうが良さそうだ」
凪沙も同意のようで、変に茶化すことはしなかった。
現在の二人のぶつかり合いは、陽のこと関係なしに起こっているため良くないと判断したのだろう。
「とりあえず、秋実のことは一旦任せる。俺はちょっと佳純と話があるから」
「な、なんで、根本さんなんですか……!?」
陽が佳純と二人きりになろうとすると、真凛は納得がいかない様子を見せた。
怒っていることで逆に素直になっているようだ。
そんな真凛に佳純は勝ち誇った笑みを向けるが――。
「ちょっと説教をするからな」
陽の一言で、その笑顔は引きつるものに変わった。
ご報告です！！
この度、皆様の応援のおかげで
オーバーラップ文庫様より書籍化して頂けることが決定致しました！
発売日は9月25日になります！
そしてそれに伴いまして、
タイトルを
『負けヒロインと俺が付き合っていると周りから勘違いされ、幼馴染みと修羅場になった』
に変更いたしました……！
書籍のほうでは数段パワーアップしてますので、
是非書籍のほうもよろしくお願いいたします♪
これからもどうか、よろしくお願いいたします！
