第51話「提案と焦らし」
「……♪」
「…………」
ご飯を食べ、本来なら帰るべき時間なのにもかかわらず陽の腕の中でご機嫌な様子の佳純。
そんな佳純を抱きしめ、頭を撫でながら陽はどう話を切り出すかタイミングを窺っていた。
実は陽は、真凛から受けた相談に対して佳純にある話を持ち掛けようと思っていたのだ。
しかし、下手なタイミングで言えば佳純の機嫌が悪くなるどころか、激怒間違いなしの内容なのでこのタイミングなら説得できる、という具合に機嫌が最高によくなるタイミングを待っている感じだ。
そうしていると、愛猫であるにゃ〜さんが自身のベッドの上でムクリと起き上がり、アクビをしながらグッと体を伸ばし始めた。
そして、陽と佳純がくっついてるところを見ると、テクテクと陽たちを目がけて歩き始める。
にゃ〜さんは陽たちの元にまで来ると、そのまま佳純の太ももにジャンプで乗っかってきた。
そして、上目遣いに陽と佳純を見上げ、かわいらしく鳴き声をあげる。
どうやら『撫でて』と言っているようで、それに気が付いた佳純はすぐににゃ〜さんを抱き上げた。
「にゃ〜さんは甘えん坊だね〜」
陽の腕の中だからご機嫌なのか、それともにゃ〜さんが相手だからなのかはわからないが、普段よりもかわいらしい口調でにゃ〜さんの頭を撫で始める佳純。
そんな佳純を見た陽は、(お前が言うのか……)とツッコミを入れたくなるが、ここでツッコミを入れたら佳純の機嫌が悪くなってしまうのでグッと堪えた。
その代わり、今までしたかった話題をこのタイミングで切り出すことにする。
「佳純、話がある」
「何?」
ご機嫌な様子でにゃ〜さんの頭を撫でていた佳純は、陽に呼ばれたことでキョトンした表情をしながら陽の顔を見上げる。
陽はそんな佳純の頭を優しく撫でながら、ゆっくりと口を開いた。
「サブチャンネル、作りたいんだよな?」
「――っ!」
陽の言葉を聞いた瞬間、佳純はパァッと表情を輝かせる。
そして期待するような目で陽の顔を見つめてきた。
(そんなに作りたかったのか……)
佳純の様子を見た陽は佳純の思いを知り、凄く申し訳なく感じる。
なんだかんだ言って陽は佳純のことを大切に思っており、なるべく考えを尊重してあげたいと思っていた。
だから、ここまで喜ぶのならもっと早く真剣に考えてあげるべきだったと陽は思ってしまったのだ。
しかし、今回に限っては佳純の希望する形とは確実に違うため、陽は少し躊躇してしまう。
このまま話すと佳純を悲しませたり、怒らせてしまうのではないか――そんな思いが陽を襲っていた。
「……また、そうやって焦らす……」
そうして陽が考え込み始めると、腕の中にいる佳純がまるで我慢できない子供かのように頬を膨らませ、拗ねたような目で陽の顔を見上げてきた。
おあずけを喰らった、とでも思っているらしい。
「いや、焦らしてるわけじゃないが……」
「…………」
話を切り出していいのかどうか、そう悩む陽の顔を佳純は物欲しそうな顔で見つめてきた。
もう完全にサブチャンネルを作る気満々でいるようだ。
(話の切り出し方、完全にしくじったなぁ……)
佳純の表情を見た陽は、自身の失言を悔いてしまう。
しかし、今更言ったことは取り消せれないわけで、にゃ~さんが飽きて佳純の手から逃げないうちに陽は言葉を切り出そうと決意を固めた。
「実は、秋実と一緒にチャンネルを作ることになりそうなんだが、佳純も一緒に――」
「は?」
「いや、なんでもない……」
意を決して話を切り出した陽だが、絶対零度なみの冷たさを感じさせる声色によって即座に方向転換をした。
その間にゃ~さんは一瞬で佳純の腕の中から飛び去り、安全と安心を求めて陽の背中へと隠れている。
佳純はそんなにゃ~さんの行動は気に留めておらず、お互いの息がかかりそうな距離まで顔を近付けて陽の目を覗き込んできた。
「えっ、どういうこと?」
そう言う佳純の目からは、全て話さないと容赦しない、という意思が込められているように陽は感じるのだった。
ちょっとご質問させて頂きたいのですが、
真凛や佳純のイラストを見たいという御方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
また、話を改稿してイラストが付くならまた読んでくれるよって方も教えて頂けますと幸いです。
まだ検討段階ではありますが、個人的にちょっとやりたいことがあって、その指針にさせて頂ければと(*´▽`*)







