第43話「やりたいことと一日の猶予」
「俺だと力不足だと思うが……」
ここで引き受けるのは悪手でしかないと思った陽は、どうにか角が立たないように断ろうとする。
しかし――。
「でも、凪沙ちゃんは陽君なら得意分野だと思うって言ってました……。それに、動画編集にも知識がある、と……」
真凛の口から思わぬ情報が出てきて、陽は思わず息を呑む。
そして、溜息を吐きたい気持ちになり、天を見上げたくなった。
(あの馬鹿、何普通にバラしてるんだよ……)
顔出しをしない動画配信者は身バレに繋がるような情報をなるべく流さない。
ましてや、他人のことであれば余計に教えてはいけないというのはマナーであり、それを破った凪沙に対し陽は文句を言いたくなった。
とりあえず、凪沙には後で電話をすることにして陽は真凛と向き直す。
「まぁ確かに知識はある」
「本当ですか!?」
「だけど、だからといってやろうとは思わない」
「――っ」
一言目を聞いて目を輝かせた真凛だが、二言目でショボンと落ち込んでしまう。
そんな彼女に対し、陽は続けて口を開いた。
「どうしてもやりたいのか?」
「やりたい、です……」
「…………」
陽は黙って真凛のことを見つめる。
すると、彼女は恥ずかしそうに頬を染めて一瞬だけ目を逸らしたが、また陽の目を見つめ始めた。
意図せず見つめ合う形になってしまったが、陽はそんな真凛を見つめながら思考を巡らせる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「そこまでこだわる理由はなんだ?」
金か、名誉か。
真凛がなんのために動画配信をしたいのかを陽は知りたいと思った。
「…………」
しかし、真凛は黙り込んでしまい何も答えない。
もしかしたら言わないのではなく、言えない内容なのかもしれない。
そう思った陽は、再度口を開く。
「一晩だけ考えさせてほしい。それで答えを出すよ」
「考えてくださるのですか……?」
「あぁ、秋実がやりたいことなんだろ? だったら、ちゃんと俺は考えるよ」
「…………」
陽がそう言うと、真凛は熱がこもった瞳でジッと陽の顔を見つめてきた。
それにより、上目遣いに見つめられて照れ臭くなった陽はすぐに目を逸らしてしまう。
そして、ぶっきらぼうな感じで口を開いた。
「ただし、秋実ももう一日ちゃんと考えてほしい。時間を置いたら考えは変わるかもしれないからな」
「わ、わかりました」
真凛からすれば陽に話を聞いてもらうことすら難しいと思っていたため、考えてもらえるというだけでも有難かった。
だから後できるのは陽からいい返事がくることを祈るだけで、そのためにもここは素直に言うことを聞いておくのが一番だ。
(とりあえず、元凶に話を聞いてからだな……)
陽が一日もらった理由は、凪沙が何を思って真凛に動画配信を勧めたのかを聞くためだった。
凪紗が意味もなくそんなことをするはずがないと陽は思っており、その目的を知るまでは下手な行動をとるわけにはいかない。
場合によっては更なる面倒ごとが待っているのは目に見ていた。
「それじゃあ昼休みも残り少ないし、さっさと食べてしまおう」
「はい……!」
話に一旦区切りがついたことで、その後陽たちは食事をとりながら他愛のない会話をして昼休みを満喫するのだった。







