第42話「金髪美少女はカメラマンがほしい」
陽の許しを得た真凛は嬉しそうに何度も陽の名前を口走る。
そんな真凛を見て陽はむず痒い感覚に襲われるが、ご機嫌な真凛の邪魔をすることはしなかった。
そして待つこと数分後、真凛がかわいらしい笑みを浮かべて顔を見上げてきたので陽は口を開く。
「さて、本題に戻るが、秋実は本当に動画配信をやりたいのか?」
真凛の話を聞いた陽は、凪沙に乗せられただけで真凛が自分の意思で決めたようには聞こえなかった。
自分の意思でないのなら始めてから後悔をすることになりかねないため、ここだけははっきりとさせたいところだ。
「も、もちろん私も望んでます!」
「そうなのか?」
真凛の性格的に、こういう人の目を集めるようなことを自分からしたがるようには思えない。
しかし真凛が望んでいると言う以上、そうなのだろう。
「どういうことをしたいとか、イメージはあるのか?」
先程はやめておいたほうがいいと言った陽だったが、凪沙のチャンネルに首をツッコむわけではないことと、真凛自身がやりたがっているようなのでとりあえず話を聞いてみることにした。
頭ごなしで押さえつけてもよくないことを陽はよく知っている。
「えっと、これから土日の度に景色を見に遠出をするではないですか?」
「あぁ、そうだな」
「きっと景色を見るまでの時間もあると思うのです。その時間は観光すると思いますので、その様子を動画にして配信できれば、と……」
猫の配信でもやりたい、と言うかと陽は想像したが、真凛がやりたいことは予想外だった。
そして、きちんとどういうことをするかイメージを付けていることに感心をする。
(ちゃんと自分の見た目が売りになることを理解しているのが、秋実の凄いところなんだよな)
真凛のような超絶美少女が観光を楽しんでいる動画はかなり多くの反響があることだろう。
男はもちろんのこと、子供みたいにかわいらしい見た目は女性受けもする。
編集さえきちんとできれば、真凛なら人気動画配信者になることも難しいことではないと陽は思った。
しかし――。
「それをするならカメラマンが必要だな。誰か当てはあるのか?」
一人撮影もできなくはないが、真凛の見た目を売りにするなら誰かに撮影をしてもらったほうがいい。
となると、当然カメラマン役を真凛は探すことになるのだが、既に陽は真凛がいったい誰を当てにしているのか察していた。
その上で、その答えが間違っていることを陽は祈りながら質問をしたのだ。
だけど――。
「あの、陽君におねがいできれば、と……」
陽の願いもむなしく、真凛は上目遣いにそうお願いをしてきた。
景色を観に行った先で撮影をするのなら、同伴している人間にカメラマン役をお願いするのは自然な流れだ。
ましてや今回真凛は相談があると陽に持ちかけているのであり、今までの話の流れを頭に入れておけば真凛がこう話を持ち出してくるのは簡単に想像が付いた。
(どうして、こう厄介事が次から次へと……)
このタイミングで陽が真凛のチャンネルを手伝うなんて、サブチャンネルを作りたいと言っていた佳純に喧嘩を売るようなものだ。
ただでさえ真凛と観光に行くことを佳純はよく思っていないのに、その上撮影までするなんて言ったらどれだけ怒ることか。
陽は想像しただけで頭が痛くなりそうだった。
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