第41話「陽君」
陽は真凛に見つめられながらも黙々とお弁当を食べ続ける。
一見真っ赤一色に見えたお弁当だが、食べてみると味付けがどれも違い辛さにも強弱があった。
野菜もキムチみたいな味付けがされていたり、唐辛子をふんだんに効かせた炒め物だったりと、本当に色々だ。
いったいこのお弁当一つにどれだけの手間がかけられたのか陽には想像もつかない。
一つ陽にわかるのは、今日真凛がギリギリの時間で登校してきた理由はまず間違いなくこのお弁当にあるということだ。
「――それで、相談ってなんだ?」
半分くらいお弁当を食べた頃、嬉しそうに笑みを浮かべて見つめてきていた真凛に対して陽は本題を尋ねる。
すると、真凛はまた急にモジモジとし始めた。
顔も赤く染めていて、これから話そうとする内容が恥ずかしいことなのだということがわかる。
陽は急かすことはせず、真凛の気持ちが固まるのを待つことにした。
やがて、意を決したように真凛は陽の顔を見上げて口を開く。
「あの――私、動画配信者になろうと思うんです……!」
顔を真っ赤にしながら真剣な表情でそう言ってくる真凛。
そんな真凛を前にした陽は、想像の斜め上を突っ切る内容に対して額に手を当てながら頷いた。
「なるほど……」
(そうか、そうくるのか……)
真凛がどうして動画配信者になりたいと言い出したのか、ある程度の流れが想像できた陽は再度口を開く。
「凪沙に誘われたか?」
「――っ!?」
陽が尋ねると、真凛はとても驚いた表情を浮かべた。
どうやら図星らしい。
(まぁ、秋実に目を付けるのは当然だよな……)
真凛はこの学校で二大美少女と呼ばれるくらいにかわいい。
しかも、金髪ロリ巨乳というオプション付きだ。
目を引くことは間違いなく、そしてかわいらしい性格が人を惹き付けることだろう。
動画配信者として人気者になる真凛の姿が陽には簡単に想像がついた。
しかし――。
「やめておいたほうがいい」
陽は、真凛が動画配信者になることは反対だった。
「えっ……?」
「凪沙のしていることは面白く見えるかもしれないが、その反面悪い奴らから恨みを買いやすいんだ。だけどあいつが今も無事なのは、金をたくさん持っていてセキュリティが万全なところで暮らしているからなんだよ。何より、ああ見えて護身術などを身に着けているから喧嘩が半端なく強い。要は、恨みを買ったところで返り討ちにできるだけの力を持っているんだ」
だけど、真凛は違う。
上品な仕草や言葉遣いから育ちの良さは窺えるけれど、大手財閥の娘というほどのお嬢様ではない。
そしてまず間違いなく喧嘩も弱ければお人好しでもある。
そんな子が悪い奴らの恨みを買ったらどうなるかなんて、想像するまでもなかった。
何より、真凛は凄くかわいくてマニア受けしそうな見た目もしている。
変な奴等に目を付けられた場合何をされるか――想像をするだけで、陽は気分が悪くなった。
しかし、そんな陽に対し真凛は言い辛そうに口を開く。
「あっ、えっと……正確に言いますと誘われたのは、動画配信者としてやることであって、凪沙ちゃんのチャンネルに誘われたわけではないのです……」
「ん? どういうことだ?」
「その、動画配信者は楽しいから、チャンネルを作ってみたらどうかって言われたんです」
つまり、凪紗は真凛に動画配信者デビューを促しただけで、自身のチャンネルメンバーにするつもりはないらしい。
そのことを聞いた陽はホッとするものの、少し違和感を覚える。
「あいつが自分のメリットにならないことで動くとは思えないんだが、どういう話の流れでそんなふうになったんだ?」
陽からすれば気になったから軽い気持ちで聞いたもの。
しかし、その質問を受けた真凛は途端に慌て始めてしまう。
「い、いえ、軽い雑談ですよ! ガールズトークです、女子会です!」
「女子会?」
陽は真凛の言葉に引っ掛かりを覚えるが、真凛は更にまくしたてる。
「そ、そんなことよりも、葉桜君――いえ、陽君にお願いしたいことがあるのです……!」
「いや、うん。なんで急に下の名前で呼び直した?」
まるで強調するかのように陽の名前を呼んできたので、陽はその言葉を聞き逃すことなく真凛に尋ねた。
すると、真凛は陽の話題を逸らせたことに一瞬だけ安堵した表情を見せ、今度は上目遣いに陽の顔を見つめてきた。
「だめ、ですか……?」
そうかわいくおねだりをするかのように聞き返された陽は、少しだけ考えてしまう。
そして――。
「駄目だ」
あっさりと、真凛のおねだりを断ってしまった。
それにより真凛はショックを受けたように縮こまってしまう。
そして、ちょびちょびと米粒を摘まんでは口に入れるという行為を繰り返し始める。
陽はそんな真凛を見て罪悪感にとても駆られるが、ここで真凛に下の名前で呼ぶことを許してしまうと半端なく不機嫌になるであろう少女の存在が頭にチラつくため、出来ればやめてほしいと思ってしまう。
しかし、折角手のこんだお弁当を作ってきてくれた女の子を突き放すこともためらわれてしまい、結果――。
「まぁ、二人きりの時ならいいよ」
二人だけの時なら佳純にバレないと思い、陽は下の名前で呼ぶことを許してしまうのだった。
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