第39話「我慢させる方法はご褒美を用意すること」
昼休み、いつものように真凛が教室に迎えに来たことで二人は屋上に移動することにした。
真凛の手には大きめの男物の弁当箱と、小さめのかわいらしい弁当箱が握られている。
小さめのかわいらしい弁当箱はいつも真凛が使っているやつのため、どうやら大きめの弁当箱が陽のために用意されたものらしい。
「わざわざありがとうな」
陽は周りの視線を集める中、真凛に対してお弁当を作ってくれたことにお礼を言う。
すると真凛は照れくさそうに頬をほんのりと赤く染め、かわいらしい笑顔で陽の顔を見上げてきた。
「いえいえ、私のために場所を移してもらうのでこれくらい当然です」
「相変わらずできた女だよな」
「えっ!?」
陽が真凛のことを褒めると、ほんのりと赤かった頬はみるみるうちに赤くなり、なぜか真凛はモジモジとし始めた。
その態度を見て陽は首を傾げるが、途端に寒気を感じて反射的に振り向いてしまう。
すると、曲がり角から顔だけを出す佳純の姿が目に入った。
佳純は悔しそうな表情を浮かべて全身から黒いオーラを出しながら陽たちを見つめている。
そんな佳純を見た陽は溜息を吐いてスマホを取り出した。
『これ以上俺の言うことを聞けないのなら、約束の件は破棄だからな』
そうメッセージを送ると、すぐに佳純はスマホの通知に気が付きスマホの画面を見始めた。
そして、『がーん!』とショックを受けた表情を浮かべ、物言いたげな目で陽の顔を見てくる。
その目は若干涙目になっていた。
しかし、何かを思い付いたかのように急いでスマホを操作し始める。
数秒後、陽のスマホが通知を受けてブルブルと震えた。
『週ニ回に増やすことを条件に引く』
送られてきたメッセージを開くと、何やら条件が提示された。
それを見た陽はどうしてこの状況で逆に条件を提示してくるんだ、とツッコミを入れたくなる。
しかしここは取り合わないのが一番なので、陽はすぐに佳純の心を折るメッセージを返した。
『じゃあ破棄だな』
そのメッセージを見た佳純は再度ショックを受けた表情をし、何やら声を出さずに口を一生懸命に動かし始めた。
どうやら文句を言っているようだ。
そんな彼女に対し、陽は続けてメッセージを送る。
『だけど、ちゃんと言うことを聞いてくれるならたくさん甘やかす』
その一文が決め手となり、佳純は嬉しそうに目を輝かせて陽の顔を見る。
そんな佳純と再度目が合った陽が頷くと、佳純はパアッと笑みを浮かべてご機嫌な様子でその場を去っていくのだった。
(ずるずる戻ってる気がするけど……まぁ、これくらいは仕方ないよな……)
「…………」
陽は佳純が先程までいた場所を見ながらそんなことを考えるが、真凛はそんな陽を近くからジッと見上げているのだった。
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