第28話「金髪美少女VS黒髪美少女、再び」
次の日、陽は真凛を連れてもう一度牛窓を訪れ、二人仲良くデー――観光を楽しんだ。
土曜日は若干不服そうにしていた真凛だが、日曜日は終始機嫌がよかったので陽はホッとしていた。
その反面、もう一人の二大美少女はかなり機嫌が悪くなっていたのだが、もうそれはそれとして割り切るしかないだろう。
少なくとも、約束の日が来れば彼女の機嫌が直る事は陽にはわかっていた。
佳純は気難しそうに見えて、実は単純な女なのだから。
そんなことがありながら迎えた月曜日――放課後、陽は屋上に晴喜を呼び出した。
そして、こっちでは――学校の二大美少女が向かい合っており、部活に向かう予定だった生徒や帰宅をしようとしていた生徒たちの注目を集めていた。
(なんで私がこんな役を……)
佳純はそう心の中で愚痴をこぼしながら、目の前にいる羨ましくなるほどにかわいらしい金髪ロリ巨乳美少女を見つめた。
(ていうかその大きさおかしくない!? 実はたくさん詰めて盛ってるんでしょ!?)
目の前にいる金髪ロリ巨乳美少女――真凛のある一部分が気になってしまった佳純は、自分とは正反対の大きさに嫉妬してしまう。
見た目や身長から考えるとそれはどう考えてもありえない大きさで、佳純は納得出来ていなかった。
「あの……?」
そして、急に立ちはだかるようにして前に立たれただけでなく、自分の大事な一部分を凝視する佳純に対して真凛は戸惑いを隠せなかった。
佳純に対しては嫌悪感があるものの、それを顔に出すほど真凛も愚かではない。
だから笑顔で退けたかったのに、佳純が凝視してくるものだから笑顔なんて作っていられなかった。
「あぁ、ごめんなさい。それで、いったい何をどんだけ詰めているのかしら?」
「えっと、なんの話ですか……?」
脈略もなく発せられた佳純の言葉に真凛は更に戸惑ってしまう。
逆に佳純は、ハッとしたようにプイッとソッポを向いた。
「今のは忘れて」
「はぁ……? それで、どうして私は進路を妨害されているのでしょうか……?」
「妨害とは人聞きが悪いわね。たまたま歩いてたらお互いぶつかりそうになっただけでしょ?」
「……では、行かせて頂きますね」
佳純がまともに答えるつもりがないと理解した真凛は、そう言って頭を下げながら佳純の右脇を通り抜けようとする。
しかし――。
「…………」
佳純は右へと足を踏み出し、無言で真凛の前に立ちはだかった。
「…………」
だから真凛は次に佳純の左側を通り抜けようとする。
しかし、それも佳純によって妨害をされてしまった。
いったい佳純が何をしたいのかがわからず、それを見つめていた生徒たちは戸惑いから皆顔を見合わせる。
彼らは真凛の機嫌が悪くなっていることを勘で察していた。
そして、そんな真凛は笑みを浮かべて佳純の顔を見つめる。
「どういうおつもりですか?」
そう尋ねる真凛の声のトーンは、いつものかわいらしい声よりも若干低かった。
そんな真凛を佳純は気に留めた様子がなく、平然とした態度で口を開く。
「別に、なんでもないわ」
「では、行かせて頂けますでしょうか? 別にどいてくださらなくて大丈夫ですので、進路を妨害しないでください」
「人聞きが悪いことを言わないでちょうだい。私が避けて進もうとしたらたまたまあなたも同じ動きをしているだけでしょ?」
「根本さん、全然前に足を踏み出していませんよね?」
「あら、あなたの目は節穴のようね。私はちゃんと前に進もうとしているわよ?」
「「…………」」
先に進みたい真凛に対し、嫌がらせのように妨害をする佳純。
二人は黙り込んでしまい、目だけでお互いやりとりを始めてしまった。
「――お、おい、誰か止めに入れよ」
「馬鹿、それならお前が止めに行けよ」
「やだよ、あの二人に目を付けられたくねぇもん」
「だけどこれ、絶対この前みたいな喧嘩になるぞ……?」
「てか、もはやなってるだろ、これ……」
一触即発――今回も佳純から真凛に突っかかる形で場の空気はかなり悪くなっていた。
だから生徒たちは各々に止めに入ることを口にするが、誰一人として彼女たちの間に割って入ろうとする者はいない。
当然だ、彼女たちは二大美少女と呼ばれるほどにスクールカーストの最上位の位置付く人気者。
そんな彼女たちを敵に回せば今後の学校生活に関わることになる。
それがわかっている生徒たちは他人任せになり、止め役を押し付け合っているのだ。
そしてこうなった彼らがどうするかというと――当然、彼女たちを止められる存在を求め始める。
だけど、今彼らが頭に思い浮かべた人物は前回とは違った。
「――おい、誰か葉桜を呼んでこいよ!」
「そうだ、葉桜だ! あいつを呼べばいいんだ!」
「ちょっ、あいつ今どこだよ! 同じクラスの奴はいないのか!?」
止め役を押し付け合っていた生徒の一人が陽の名前を出したことにより、真凛たちを遠巻きに見ていた生徒たちが口々に陽の名前をあげ始めた。
その言葉に真凛と佳純は反応し、佳純のほうが先に口を開く。
「もう放課後よ? あなたは帰らずにどこに行こうとしているのかしら?」
「別に、私がどうしようと勝手だと思いますが?」
「そうね。ただ、彼ならもう帰っていると思うわよ?」
(なんで、この人に気付かれてるのですか……?)
真凛は顔に出さず、心の中でだけ黒い感情を覗かせる。
今回真凛は、陽と少し話がしたくて彼のところに向かおうとしていた。
その際に佳純に足止めを喰らってしまったのだ。
「大丈夫だと思います。聞けば彼はいつも一番最後に教室を出ているようですからね」
「そう、なら行ってみるといいわ。もう彼はいないでしょうから」
そう言うと、佳純はあっさりと道を開けた。
そのことに関して真凛は凄く違和感を覚えるが、足を踏み出してももう彼女が前を塞ぐことはない。
だから、注目を集めているということもあって真凛は足早に立ち去った。
(全く……この貸しは大きいわよ、陽)
佳純は真凛の後姿を眺めながら、大きく溜息を吐いた。
元々佳純は見た目や才能から人気を買っていたが、性格には難がある生徒だと皆から思われている。
一部の特殊な趣向をした生徒たちからは大人気だったが、それ以外の生徒からは真凛ほど崇められているわけではない。
だから一部には佳純のことを悪く言う生徒もいるわけで、前回の真凛に絡んだことで更にその数は増えていた。
そして今回の一件。
正直佳純の評価は生徒たちの間でだだ下がりだろう。
だけど、今の佳純にはもう周りの評価なんて関係なかった。
手に入れたかったものは既に手に入っているのだから、外野のモブたちなんてどうでもいいのだ。
(ふふ、約束の日……何してもらおうかなぁ)
佳純はそんなことを考えながら、この場を立ち去るのだった。
――当然、急にご機嫌になった佳純を見ていた生徒たちからは、得体の知れないものでも見るような目で見られていたのだが。
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