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【完結】負けヒロインと俺が付き合っていると周りから勘違いされ、幼馴染みと修羅場になった  作者: ネコクロ
第一章【三角関係】

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第26話「向き合う過去とこれからのこと」

 真凛から見えないところに移動した陽は、鞄の中に入れておいたビデオカメラを取りだした。

 そして、次にサイトに投稿する動画を撮り始める。


 夕日によってオレンジに染まる空や海はとても綺麗で、逆に夕日の光が届かずに影が差している部分は儚くて寂しい。

 だけど、相反する二つが共存することによって言いようのない美しさと尊さを醸し出していた。


 陽は景色の中でも夕日と海の組み合わせは特に好きだ。

 だからこそ、今回初めて真凛を連れてきたのも夕日が見える時間帯の海になる。


 そうして動画を撮っていると、陽は自分に近寄ってくる足音に気が付いた。

 念のため視線を向けてみると、そこに立っていたのは綺麗な金髪をした小柄な美少女――ではなく、綺麗な黒髪をしたモデルのようにスタイルがいい美少女だった。


「…………」


 陽は少しだけ目でその美少女と会話をし、黙って視線をビデオカメラの画面に戻す。

 そのまま十分ほど撮影をした後、陽は撮影を止めて口を開いた。


「ちゃんと、約束は守ってくれたんだな――佳純」


 そして、自分に近寄ってきた美少女――根本佳純へと、声をかけた。


 どうして彼女がここにいるのか――それは、数日前に届いた一通のメールに理由はあった。

 陽が真凛との電話の後に届いたメールにはこう書かれていたのだ。


『次の撮影、私も行くから』と。


 そのメールを受け取った陽は複数の可能性を考え、そして佳純と交渉をした。

 それにより、やっとのこと彼女を話し合いの場所に引きずり出せたのだ。


「わざと見せつけてくるなんて、本当にあなたは最低よ、陽」


 佳純は名前で呼ばれたことで自分も名前で呼び返し、そしてとても冷たい目を陽に向けてくる。

 その様子からは怒っていることがありありとわかり、陽は溜息を吐きながら口を開いた。


「別に、見せつけていたつもりはないし、そんな大したことはしてないだろ? だから、一々殺気を向けてくるなよ」


 陽はちょくちょく自分を襲う寒気の原因が何かを理解していた。

 そのことについて文句を言ったのだが、更に佳純の機嫌は悪くなる。


「か、間接キスまでしといて何を……! しかも、ソフトクリームで……! 私まだしてもらってないのに……!」

「お前、本当に思考ヤバいよな」


 普通に爆弾発言をする佳純に対し、呆れたように陽は言い放った。

 だけど、内心ホッとする。

 今、自分が話したかった佳純はちゃんと目の前にいるのだと。


 しかし、陽の気持ちを知らない佳純は更に怒り始めた!


「私をこんなふうにしたのはあなたでしょ!」

「とんでもない言いがかりだ」


 変な誤解を生みかねない佳純の言葉に間髪入れず陽はツッコミを入れた。

 どうして女はこうも誤解を生みかねない発言をするのか――とりあえず、今周りに人がいなくてよかったと陽は思う。


「……まぁ、お前には悪いことをしたと思っているよ」

「――っ」


 急に陽が優しい声を出すと、佳純は息を呑んで陽の顔を見つめた。

 だから、陽は佳純の目を見つめ返しながら言葉を続ける。


「中三の冬、俺はお前に耐えられなくなって突き放した。お前を甘やかし続けて依存させてしまっていたのは俺なのに、それを勝手にストレスに感じて酷い突き放し方をしてしまったんだ。そのことを今でも悪いと思っている」


 陽は、幼い頃から自分に依存し続ける佳純のことが。ある日を境に耐えられなくなっていた。

 最初はかわいい妹みたいな感じで陽は甘やかしていたのだが、歳を重ねるごとに佳純の陽に対する依存度は跳ね上がっていき、中三の時にはもう陽の許容範囲を超えていたのだ。

 そんな時に佳純からのあるアクションがあったことにより、ついに陽は彼女を突き放してしまった。

 それは本能的な危機回避だったのかもしれない。


 だけど、それにより依存先を失った佳純の心は一時期に壊れてしまい、そして今もなおあの頃とは違って彼女の性格は歪んでしまっていた。


 そのキッカケになったアクションというのが――佳純からの、陽に対する告白だったのだ。


「今更……そんな話を……持ち出して……何……? あなたが……悔いたところで……私にしたことは……なくならない……」


 佳純は振られた時のことを思い出し、胸が締め付けられる感覚に襲われながら言葉を絞り出す。

 告白を振られて以来、佳純は一時期に塞ぎ込んでしまっていた。

 そんな彼女がどうやって立ち上がったのかというと、それは自分を捨てた男に対する怒りを憎しみに変えることで立ち上がれたのだ。


 そして、佳純は誓った。

 絶対に陽に復讐してやる、と。


 まぁそれが紆余曲折して結局また元の感情に戻りかけてはいるのだが――だからこそ、佳純の心は不安定になってしまっている。

 その結果が、現状を招いていた。


「わかってる。だからこそ、こうして話をしたかった」


 陽は塞ぎ込んだ佳純を前にして、自分の対応が間違えていたことにすぐに気が付いていた。

 だからこそ償いをしようとしていたのだが、それなのに彼女は陽から逃げるようになってしまっていたのだ。


 最初の頃なんて会うことさえ叶わなかった。

 高校で同じクラスになった時はさすがの陽も冷や汗をかいたものだが、思えば保育園の頃から佳純と別クラスになったことはないのでこれも運命だろうと思っていた。


 そして、さすがに同じクラスなら話せると思ったのだが――佳純は陽の悪評を流し始め、陽が近寄ろうとすればあからさまに嫌がって近寄れなくしたのだ。

 それにより陽が近寄ろうとすればクラスメイトが非難の目を向けてくるようになり、あからさまに邪魔をする生徒も出てきた。

 そのせいで陽はクラスで話をすることができず、外で会った時に話をしようとしても佳純はすぐに話題を逸らして逃げてしまう。


 つまり、今まで陽が過去について話しをしようとしても、佳純が逃げ続けてしまうのでどうにもならなかったのだ。


 だけど、やっと陽は彼女を話し合いの場に引きずりだすことができた。

 当然陽も佳純から出された条件を呑んでいるのだが、現状をどうにかするためにはそれも安いものだった。


 一旦陽は間を置き、深呼吸をする。

 そして、佳純の目を再度見つめ直し、ゆっくりと口を開いた。


「俺はもうお前を突き放すことはしないし、約束もちゃんと果たす。だから、頼む。もう秋実や木下を振り回すのはやめてくれ。何も悪くないあいつらを俺たちのゴタゴタに巻き込むなんて、そんなの誰が聞いてもおかしいだろ」


 陽はここで佳純が彼らから手を退けば、問題は全て解決をすると思っていた。

 一時的に晴喜を傷つけることにはなるけれど、このまま気持ちもない佳純が相手をするよりは断然いい。

 少なくとも、彼を幸せに出来るのは佳純よりも真凛だ。


 既に幼馴染みで仲良しだったという二人の関係は壊れてしまっているけれど、それも傷ついた晴喜に真凛が寄り添うことで修正されると陽は考えていた。


 だから、なんとしてでもここで佳純に手を退かせなければならない。

 そう思ったからこその頼みだったのだが――佳純は、陽の予想と期待を裏切る言葉を発した。


「あなたが私の条件を呑んだ以上、私が手を退くのはかまわないわ。だけど――あなたは、一つ勘違いをしている。ここで私が退いたところで、秋実さんはより傷つくだけよ。それも今度こそ――そうね、過去の私と同じくらいには傷つくと思うわ」

既に段々とラストに向けて進んでいます!

(あくまで一つのまとまった話としてです!完結ではないです!)


これから更に盛りあがっていく予定なので、楽しんで頂けますと幸いです!


作品を気に入って頂けましたら、

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― 新着の感想 ―
続きが気になります!
[一言] なんだかんだ木下が1番の爆弾って考えでいいのか…?(直感による結論)
[一言] ???ってなったわ。 負けヒロインって幼なじみのほうやん。 ストーリー始まる前から告白して振られとるがな。
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