第20話「天使でも許せないことはある」
「――あっ、動画が更新されてます!」
勉強の息抜きとして動画サイトを開いた真凛は、最近お気に入りのチャンネルが新しい動画を載せていることに気が付き、嬉しそうにページを開く。
そして、流れ始めた動画に釘付けになった。
「――ふふ、本当に素敵なものですね」
10分ちょいの動画を見終えた真凛は、満足そうに頬を緩める。
綺麗な景色はもちろんのこと、真凛はナレーションとBGMのことが特に気に入っていた。
「こんなにも澄んだ声で視聴者を惹きつけるように情景を言葉に表せるだなんて、同じ女性として憧れちゃいますね。BGMも毎回違うのに風景にピッタリと合いますし、いったいどのような素敵な御方がこの動画を作られているのでしょうか?」
真凛は美人で綺麗な、そして優しそうなお姉さんを思い浮かべて再度頬を緩める。
見た目が子供にしか見えない真凛は大人の女性に凄く憧れていた。
そのため、どうにかして内面だけは大人っぽく見せようと努力をしているのだ。
少し前までの憧れは、根本佳純だった。
彼女のような容姿になりたい、真凛は何度も願ったことだ。
だから正直晴喜が佳純を選んだ時、真凛は心の中で仕方ないと思ってしまった。
自分では佳純には敵わないのだと。
そう思ったからこそ、真凛は辛い気持ちをなんとか押し留めて、佳純と晴喜に対して幸せを願う言葉を言うことができた。
だというのに――。
「根本さんは、晴君のことをなんとも思ってなかった……」
先程までの幸せな気持ちは一変。
晴喜と佳純のことを思い出してしまった真凛は、凄く胸がしめつけられる感覚に襲われた。
「なんで、私……あんな人に負けたの……。なんで、私を選んでくれなかったの……晴君……」
真凛は胸を手でギュッと握りながら、胸の中に秘めていた想いを吐き出す。
止めどなく目から流れるものを止める必要はない。
なんせ、今は周りに誰もいないのだから。
一度吐き出したらもう止まらない。
いくら優しい真凛とはいえ、今佳純がしていることは到底許せるものではなかった。
中でも一番許せなかったのは、好きな人の気持ちを踏みにじっている行為だ。
だけど、敗者の真凛にできることなんて何もなかった。
晴喜に佳純の本当の気持ちを伝えたところで、彼が佳純のことを好きなら信じはしない。
いくら幼馴染みの真凛の言葉であろうと、晴喜は好きな人のほうを信じると真凛にはわかっていた。
それどころか、自分が嫌われかねない行為だ。
それなのに佳純のことを告げられるほど真凛は無謀ではない。
そして、佳純本人に話しをしても無駄だということもわかっていた。
真凛が言って素直に聞くような人間なら、そもそもこんな最低なことをしたりはしない。
その事実たちが、真凛の心を蝕み苦しませていた。
――そんな時だった、スマホの通知音が鳴ったのは。
「葉桜君……」
送り主の名前を見た真凛は、頬を伝う涙を拭きメッセージを開いた。
『週末のことについてなんだが、合流する時間とかもこっちで決めてしまって大丈夫か?』
それは、週末約束していたことに対する確認のメッセージだった。
真凛は少しだけ迷い、そして返信をする。
『あの……お電話、させて頂いてもよろしいでしょうか……?』
そうメッセージを送ると、既読はすぐについた。
しかし、肝心のメッセージは返ってこない。
そのせいで不安になった真凛は慌てて取り消しのメッセージを送ろうとするが、ちょうどそのタイミングでメッセージが返ってきた。
『わかった、こちらからかける』
そのメッセージから十秒ほど経って、スマホの画面が着信を知らせるものへと切り替わるのだった。
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