第17話「気分一転、金髪美少女の変化」
翌日――学校では、昨日に引き続き軽い騒ぎが起きていた。
陽は、そんな元凶の顔をジッと見つめる。
「何か付いていますか?」
元凶はいつも通りかわいらしい笑みを浮かべ、小首を傾げながら陽に尋ねてきた。
周りから注目されていることは気に留めた様子がなく、陽は箸を置いて若干呆れながら口を開く。
「髪、切ったんだな」
皆が聞きたいであろうことを質問すると、周りで耳を澄ませていた生徒たちの体がビクッと震える。
陽はそんな生徒たちを横目で見ながら真凛の言葉を待った。
「気分転換、してみたんです」
真凛はそう言いながら、ロングウェーブヘアーからナチュラルボブヘアーになった髪を触る。
入学した頃から真凛はずっと長い髪を維持していた。
一年生の頃から有名だった真凛のその姿はこの学校にいる全員の記憶に焼き付いている。
そんな真凛が髪を短く切ったことで、学校は軽い騒ぎになっていたのだ。
今まで長い髪を維持してきた女性が髪を切る。
その行為が指す意味について、恐らくこの場にいる多くの生徒が同じものを思い浮かべていることだろう。
「似合いませんか……?」
今まで短い髪にしたことがないからか、真凛は不安そうに陽に尋ねてくる。
若干上目遣いになっている彼女に対し陽は、(こいつ、意外とあざといな……)と思いながら口を開いた。
「好みの問題だろうけど、俺は短いほうが似合ってると思うぞ」
「そ、そうですか……えへへ……」
普段他人を褒めない陽が褒めるようなことを言ったからか、真凛は嬉しそうにかわいらしく笑った。
髪が短くなり、そして照れ笑いを浮かべる真凛を見て陽は、(幼さが数段増したな)と思いながらもそれは口にしない。
それよりも、陽の言葉を聞いて真凛が嬉しそうに笑うと、周りから一斉に舌打ちが聞こえてきたことが気になる。
どうして舌打ちをされたのかわからず訝しげに周りを見る陽だが、そのせいで睨んできているたくさんの生徒と目が合う。
(なんかおかしなことを言ったか……?)
周りの生徒とバッチリ目があった陽は居心地の悪さを感じながら、前を向いて置いていた箸を手に取る。
そして、目の前にある真っ赤なラーメンに箸を伸ばした。
「……昨日もそうですが、激辛の食べ物がお好きなのですか?」
陽が麺をすすっていると、少しだけ物言いたげな様子の真凛が尋ねてきた。
しかしその目は、この真っ赤に染まった食べ物に対して興味を抱いているような目をしている。
どうやら真凛は好奇心旺盛らしい。
「まぁ、好きだな」
特段意識をしたことはないが、思い返してみれば確かによく食べている気がする。
そんなことを考えながら陽は答えたのだが――。
「そういえば、辛いものが好きな方はドMだとか……」
「――っ!? ゴホッゴホッ!」
真凛の思わぬ一言によって、むせてしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「き、気管! ゴホッゴホッ! 唐辛子が……ゴホッ……気管に入った……! 喉が焼ける……!」
「わわ! 水! はい、水です!」
唐辛子が気管に入ったことで悶える陽に対し、咄嗟に真凛は身近にあったコップを陽へと渡す。
そして、昨日とは逆の立場になりながら陽は水を一口だけ飲むが、この対応は間違っていると気が付きすぐに飲むをやめた。
というか、水を飲んだことで更にむせてしまった。
そのまま陽は気管に入った唐辛子によって苛まれるのだが、周りにいた生徒たちは(ふざけるな……!)と、なぜか笑うのではなく怒りを燃やしていたという。
「――泣かすぞ……」
「ご、ごめんなさい……」
落ち着いた後、真凛に怒りを燃やした陽が若干涙目で睨むと、真凛はシュンとして謝ってきた。
しかし、唐辛子に喉を焼かれる思いをし、そしてドMだとからかってきたことに対する陽の怒りは収まらない。
だから更に文句を言おうとしたのだが――なぜか、自分の前にコップが二つあることに気が付き口を閉ざしてしまった。
それが何を意味しているのか、怒りで頭に血が上っている陽だがすぐに理解したのだ。
そして、念のため真凛の手元を見てみる。
すると、彼女の付近にはコップが置かれていなかった。
これは真凛が食べる時に水を用意していなかったというわけではない。
彼女が水を用意し、ちゃんと飲みながら食べている姿を陽は見ていた。
つまり、彼女の手元にコップがなく、陽の手元にコップが二つある理由は一つしかないのだ。
「えっと、黙り込まれると更に怖いのです……が……」
俯いていた真凛は陽が黙り込んでしまったことで恐る恐る顔をあげたのだが、その際に陽の前にコップが二つ置かれていることに気が付き言葉が途切れてしまった。
そして、自分の手元にコップがないことに気が付き、プルプルと体を震わせる。
「あ、あの、ごめん、なさい……」
「いや……うん、こちらこそ……」
先程の怒りの雰囲気はどこへやら。
二人はお互いがやらかしたことに気が付き、互いに気まずさから謝るしかなくなった。
そんな二人を取り囲む周りの空気は当然――陽への怒りと殺意で満ち溢れていたという。
「…………」
「あ、あの、佳純ちゃん……? そんなに睨むと二人が可哀想だよ……」
「…………」
「ひぃっ――! ご、ごめん! なんでもないです……!」
何やら離れた席では、黒い雰囲気を纏った女子に睨まれた男子が怯えたような声をあげていたが、いたたまれなさでいっぱいになっていた陽は気が付かないのだった。
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