家族との再会で涙をーーー流せずーーー
「これより裁判を始めます。罪人はお兄様です」
「え? これ裁判なの? しかも俺が被告人っていうか既に罪人扱い?」
場所は懐かしき現代の我が家。久々の妹のリンとの再会に抱きつこうとしたら
腕と襟を掴まれてーーー《背負い投げ》である。
えまって!!?知らない間に反抗期来た!!?と内心驚くが、
リン曰く、ーーーお兄様の風格が違ってーーー
らしい。謝罪されてそれを受け入れたものの、その後直ぐにリンに言われて座布団の上で正座するが、なんか裁判が始まってしまった。悲しいことに被告人は俺で裁判長は妹のようだ。クスン
「コラ、罪人のお兄様は聞かれた事以外喋らない! もっと罪人らしい自覚を持つべきですよ!」
「せめて被告人扱いに下げてくれないか? 罪人罪人って兄貴泣くよ?」
意外と残酷なことを言ってくる我が妹。肩の少し下まで下ろす黒髪ポニテの中学3年、可愛らしい自慢の妹で着痩せタイプなのか、その胸部は俺の同年代も圧倒させる豊満で柔らかさがあった。(一つしか差は無いが)
よく遠慮なく戯れてくるから知っているけど、いくら兄でもちょっとドキマギしてしまう。スキンシップの激しい困ったお年頃の妹だった。
「一応訊くが……なんで罪人扱いなんでしょうか?」
「モルク…と言いましたか?」
「おうふ」
そして紹介は遅れてしまったが、罪人扱いの俺は高校一年のノゥト・べグリッフ。
ついさっきまで異世界で魔王ブッ○進行団行っていた元勇者だ。
何年も掛かったが、こっちの世界では一瞬のうちに帰って来れた(世界線違うけど)。成長した肉体も元に戻っていたが、授かった恩恵は残っていた。
……帰還後、リンの口から出てきたモルクとの一悶着について学園からの連絡が来たらしく、
異世界の事以外については話したのだが……
「リンさんやリンさんや…何に怒ってるのか兄さんは皆目見当つかないのだが」
「え、私がお兄様に起こるなんて事ないじゃ無いですか」
「罪人扱いされたのに!?!?」
「可愛い妹の茶番に付き合ってくれるお兄様も素敵ですよ?」
「知らん!?」
「私がお兄様にお聞きしたい事…ええ、勿論あります」
「何故今頃になって、お兄様が力を隠すのを止めたのかです」
「い、いや、だから俺は元から」
「まだそんな事を言うのですか?お兄様が元よりお強いのだったことは私だけは知っていたのですよ?」
と片方の眼で俺を睨め付けるリン、贔屓無しで可愛い女子の半睨みは、特殊性癖の者共ならばさぞありがとうございますと両手の掌合わせて南無南無するだろう(俺は対象外だ)
そして、モルクの話云々で分かった事…と言うより、理解した事として、
「お兄様の魔法属性診断で無反応だというのが間違いであったことくらい、きちんと理解していましたよ?」
そう、魔法だ。この世界にはない筈だった『異世界のチカラ』とも言える。
モルクとの闘い(殆ど一方的な)について報告したが、一般より少しは魔法のレベルが高いという妹からは良い意味で問題ありと言われる。何故じゃ
「だからお兄様の話を疑うわけじゃないのですよ? ただ……」
「ただ?」
「身体強化…と言う魔法がどのようなものか…理解出来ないと言いますか……」
この世界にもスキル持ちの『能力者』なんている。異世界の部分は割とすぐ受け入れられたと思ったが、そうすんなりと受け入れられるものでは無いらしい。
俺の見解だと、能力者はその所持スキルをガイドブックに見立てて、そのスキルに沿って魔法を発動させる為、意識的に魔力を操作しないのだろう。
「んー……。まぁ、そう言うもんだと理解してくれ」
「分かりました」
即答かよ、信頼がオメェッ。
そして色々リンと話してる結果分かったのは
・10歳で義務的に受ける魔法属性診断で無反応の為《無能》と蔑まれ始めた
・無反応にも関わらず、初級魔法ならば四属性全て使えた為、
最底辺ながらも実技試験を受けられ、筆記試験で点数を稼いだ事で魔法学園ななんとか入学出来た
・現代に魔法が追加されたのと関連してる事以外は特に変わっていない
この三つだ。
「んー…あんま変わらん」
「何がですか?」
「なんも無いー」
何が変わらないかって、それは俺の知ってる過去と似たり寄ったりであった事だ。
流石に出会いきっかけ付き合いは違ってるのだろうが…交友関係や環境が同じなのだ。
例えばモルクだ。俺の知る世界線だと、確かリンのブラコン具合が酷すぎて俺に嫉妬し続けた結果あーなった(らしい)
この世界線だと、さっき述べた通り、魔法属性診断の結果いじめ対象にされたのだ。
結局虐められてるのな俺とは思いつつ、さほど困った事にはならなそうである。
「ハァ…とりあえず、お兄様にあと一つ、聞いておきたい事があります」
そう言って前の座布団から立ち上がるリン。
「お兄様はそのお兄様の実力の片鱗を見せつけた訳ですが、置いておきます。
これから、どのように過ごすのですか?」
「んー…」
そこについてはまだ少し悩んでいた。
この世界線についての情報収集の後と送っていた(現実逃避)が、リンのおかげでほぼ把握した。してしまった。
おそらく、リンはこう聞いてるのだろう、
今まで通り目立たないように過ごすのか、『枷』を外すのか。
「…なんとなく理解しました」
「え?」
「お兄様は考えてるのですね?目一杯動いていきたいが、然程目立ちたいとは思ってないから、どう立ち回ろうかと」
やべぇ、一寸の狂いもなくバッチリバレテラァ、
「それならば、一つ提案があります」
「ん?流石リンだな、是非聞かせてくれ」
「はい、私としましてはーーーー記憶喪失になってみては、どうでしょうか?」
ふぇ?
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