同窓会
一週間前、封筒がアパートの郵便受けに入っていた。何かなと思って、封筒の裏側を見た。田口。小学校の時の同級生だ。部屋に戻って、封筒の口を破ると、同窓会の知らせが入っていた。
僕はそれを見ても気乗りはしなかった。今更何を話せばいいのだろう? 僕は夜の暇な時に親しかった友人に電話した。こいよと友人が勧めるので、僕は生返事をした。
僕は同窓会の日、なんとなく行こうかなと思って、フォーマルな恰好をして同窓会のある地元の居酒屋に向かった。
そこに集まった同窓生の顔を見ると、厳しい社会で揉まれ、笑いながら楽しそうにしていたが、長年働いてきただろうか、目元に皺のできた奴も多かった。自分の子供の話で盛り上がる奴。声を張り上げながらカラオケを歌う奴。酔っぱらって絡んでくる奴。小学校の文集に子供らしい輝かしい夢を書いていたが、それを叶えた奴はほぼいなくて、ただ、日常生活に埋もれていた。
わいわい騒ぐ女性陣が固まっているところに目を向けると、ハルカはその場所にはいなかった。僕が壁によっかかりながら、静かにビールを飲んでいると、幹事の田口が僕に声を掛け、隣に座った。「どうしてる?」僕は「トラックの配送してるよ」と言った。「大変だろう?」田口は小学校の時に体重が45キロしかなかったが、今ではビールでぽこりと下腹が出ていた。「お前もな」と僕が言うと、「ははは」と笑った。「ハルカは?」と僕が言うと「子持ちでスナックで働いてるよ」と田口は言った。僕は、心臓がどくりと鳴った。田口は僕の顔をじっと見て、徐にスーツのポケットから名刺を出した。スナックの名刺だった。「行ってみろよ」と田口はにこりと笑った。その無邪気な顔は小学生の田口のままだった。僕が名刺を見ると、「black cat」と書かれていた。