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エルフの町

サウスシティへはセントラルパークから馬車が出ていた。

学たちはそれに乗ったが、ほかの乗客は居なかった。

戦争が起きているのか休止しているのかはわからなかった。

途中行き交う冒険者も装備が物々しくなっていた。

「お兄さんたちも、サウスシティに行くのかい？」

「はい」

「俺もだ」

あとから乗ってきた冒険者に話しかけられた。

何でも傭兵を生業としているそうだ。ゴールドバッチをつけている。

「ノースシティのシスティーナ様が病気になったそうだな」

「ええ」

学はそれだけ答えると傭兵に訊ねた。

「サウスシティのそばにあるエルフの村はご存じですか？」

「ああ、噂には聞いたことがある」

その後はあまり話も弾まずに、サウスシティに着くまでお互い黙っていた。

サウスシティにつくと傭兵とは手を振って別れた。

「さて、冒険者の館に行ってみるか」

「はい」

冒険者の館につくと、学は訊ねた。

「エルフの村に行きたいんだが、道を教えてほしい」

「いいわよ、情報料は2000ギルね」

学は言われた通りに2000ギルを渡した。

「エルフの村は結界が張られてるの。サウスシティから歩いて30分くらい」

冒険者の館の主は地図を出して丸をつけた。

「ここがエルフの村。依頼状があれば封印をとけるわ」

「ありがとう」

学たちは地図の通りに歩いて行くと、薄ぼんやりと霧のかかった場所についた。

「学さん、ハンナさんからもらった依頼書が光っています」

学が依頼書を取り出し掲げると、霧が晴れ、小さな村が見えた。

「ここがエルフの村か」

「お前たちは誰だ？」

エルフと思わしき耳のとがった男性が話しかけてきた。

「学騎士団、ハンナの依頼でエリクサーを取りに来た」

「それなら依頼書を見せてみろ」

「これだ」

そう言って学が依頼書を見せると、男はふんと鼻を鳴らした。

「こっちに来い、冒険者の館がある」

学たちは男について行った。

冒険者の館と言われたが普通の民家のようだった。

「俺が冒険者の館の主だ」

さっきの男が席に着いた。

「エリクサーの話だが、今は切らしている」

「なんだって？」

「シルバーウルフが、エリクサーの材料となる薬草の群生地に住み着いて取りに行けなくなったんだ」

「じゃあ、シルバーウルフを倒せばエリクサーが手に入るんですね」

「ああ、そうだ」

学たちはシルバーウルフを倒すため、薬草の群生地に向かった。

「なんだか魔物が街に近づいてるんですね」

「そうだな、あやの」

「シルバーウルフって強いのかな、学」

「たぶん強いんだろう、翼」

そう言いながら話していると、薬草の群生地についた。

低いうなり声が聞こえる。

「シルバーウルフだ」

学は光の剣を装備して、シルバーウルフに立ち向かった。

「がぅうぅぅ」

シルバーウルフが噛みつこうとする。翼が立ちはだかり、炎の壁を作った。

燃えさかる炎にシルバーウルフがひるんだ隙に、翼が炎の剣で斬りかかる。

学も光の剣で、シルバーウルフに斬りかかった。

シルバーウルフは息絶えた。

「意外と弱かったな」

学はそう言うと、ハナにドラゴンに変化するように言って、シルバーウルフの死体を運ばせた。

「帰ってきたか！　シルバーウルフじゃないか？　普通の剣では傷もつけられないぞ」

「そうなのか？　魔法剣であっという間に倒れたが」

学がそう言うと、冒険者の館の主はため息をついた。

「エリクサーはすぐできる。ちょっと待っていてくれ」

学たちはその間エルフの街を探索した。

といっても小さな村であまり情報も無いようだった。

「待たせたな」

学は紹介状と引き換えにエリクサーを手に入れた。

「戦争が起きていると言う話を聞いたが、この村にも異変が起きているのか？」

「シルバーウルフが現れたくらいかね」

冒険者の館の主はそれだけ言うと、さっさと帰れと言わんばかりに手を振った。

学たちはサウスシティに戻った。

「あら、あんたたちいいもの持ってきたのね」

「ここで買い取ってもらえるか？」

シルバーウルフの死体をサウスシティの冒険者の館へ持ち込むと学が聞いた。

「いいわよ。シルバーウルフの毛皮も牙も高値で売れるからね」

「はい、5000ギル」

学は5000ギルを受け取った。

「戦争は今はどうなってるんだ？」

翼が聞いた。

「今は小休止。システィーナ様が病気らしいって話ね」

「サウスシティは好都合じゃないのか？」

「それがサウスシティ内部で抗争が起きてて戦争どころじゃ無くなってるの」

「そろそろ馬車がでますよ」

あやのが言った。

学は冒険者の館の主に礼を言うと、馬車に乗ってセントラルパークへ帰って行った。