ドラゴンの卵
セントラルパークの裏山は、うっそうと茂っていた。
「なんか変な虫とかいそうだな」
翼は嫌そうにつぶやいた。
「嫌なこと言わないでくださいよ」
あやのは学の後をついて歩いた。
「ドラゴンの巣というと、洞窟だろうな」
「ランタンとか持ってたっけ?」
翼がそう言うと学が答えた。
「俺には光の魔法があるから大丈夫だろう」
学はそう言うと手をかざし、その手の上に光の玉を出現させた。
「心強いね」
「でも、精神力は大丈夫ですか?」
そうこう話していると、おあつらえ向きの洞窟の入り口が見えてきた。
あやのが耳を澄ます。
「何かがいる気配がしますね」
「よし、行こう」
学が先頭になり、あやの、翼、ハナの順に続いた。
洞窟は真っ暗で、学の光魔法がなければあっという間に道に迷うどころか何処にいるかさえわからないだろう。学達は足下に注意しながら歩いて行く。
そのとき、奥の方から、ドラゴンと思わしき生き物の咆哮が聞こえた。
「大丈夫かな、学さん」
あやのが不安そうに問いかける。
「大丈夫、気を付けていこう」
学はそう言うとさらに歩き続けた。
翼もハナも後に続いた。
しばらく進むとドラゴンの巣が見えた。と、ドラゴンも姿を見せた。
「たまご、どうやってとりましょうか?」
あやのが翼に問いかける。
「私の素早さがものをいうね」
そう言うと翼は寝ているドラゴンの脇を抜け、卵を一つ盗み出した。
「余裕余裕」
そういう翼の左肩にドラゴンの尻尾が当たりそうになった。
学達は緊張しながら、ドラゴンの巣を後にした。
「やった、簡単じゃん」
そう言った刹那、翼の頬に切り傷が刻まれた。
ドラゴンが目を覚ましたのだった。
「みんな、いそげ、逃げるぞ」
学は剣を構え、あやのと翼、ハナが洞窟から出て行くのを見守った。
一方ドラゴンは卵を盗まれたことに気づき、怒っている。
学は闇の剣の魔法を使い、ドラゴンの鼻先を切りつけた。
ドラゴンはギャオオオオンと鳴くと、洞窟の奥に身を隠した。
学は自分の精神力が限界に近いことを感じた。
「闇の魔法がこんなに消耗するなんて」
学は1人つぶやいた後、ハナたちのまつ洞窟の出口に向かった。
足がふらつく。学はみんなに心配をかけないよう、普通の態度で言った。
「ドラゴンは今は逃げた。はやく街に帰ろう」
あやのが言った。
「学さん、顔色わるいですよ」
「大丈夫だ」
学はそう言うと笑って、セントラルシティへの道を歩き出した。
翼は卵を抱えたまま、その後を追った。
セントラルパークまではたいした敵も出ず、一行は無事に街に着いた。
ハンナのビストロに入ると、ハンナが大きな声をあげた。
「ずいぶん早いじゃないか」
「早いに超したことはないだろう?」
学がそう言うとハンナは笑った。
「無理したね、学」
それだけいうと、黄金リンゴのジュースを学に渡した。
「サービスじゃよ」
学は一気にそれを飲み干すと、深いため息をついた。
「ハンナ、俺たちはレベルどれくらいなんだ?」
「そうさね、普通よりはちょっと高い位だけと、ノースアイランドに向かうには少し厳しい程度かね」
学はハンナがそう言うのを聞いて項垂れた。
「がっかりするでない、いまドラゴンの卵をもって来られた抱けて十分じゃて」
ハンナはそう言うと、奥の部屋へ入っていった。
「ほれ、報償の一万ギルじゃ」
「ドラゴンの卵って希少なのか?」
「わざわざ危険を冒して取りに行くことは少ないのでの」
ハンナはそう言って、翼から卵を受け取った。
「ご苦労さん、今日は街でゆっくり休むといい」
学は頷いた。あやのと翼、ハナも頷いた。
学はハンナの案内を聞き、安宿を探すとすぐに見つかった。
三日月やと書かれた看板は薄汚れていたが、最小限の設備は整っていそうだった。
「これからのことを考えると、あまり贅沢はできませんね」
あやのはそういうと、三日月やの主人と交渉した。
結果、一部屋にベッドが二つという部屋に泊まることになった。
シャワーがついていたのが救いだった。
学達は順にシャワーを浴びると、学とハナ、あやのと翼でベッドに入った。
疲れ切っていたのだろう。すぐにみんな眠ってしまった。




