初めての晩酌
車でスーパーに向かった
店内を歩いて回ったが
これといって良いつまみを見つけられないから
奮発してステーキを買おうという話になった
そしてステーキは親方がおごってくれた
レジで「ステーキごちそうさまです」とお礼を言った
ステーキにちなんで「素敵な親方」なんて腐っても言わん
しかしビニール袋を提げて車に向かって歩いているときに
「わし、素敵やろ?」
なんて親方が腐ったことを言ってきたので
「素敵なのはステーキ」
なんて僕は腐ったことを言い返してしまった
車に乗り込みくだらない話をしているといつの間にか家に着いていた
今日の晩酌に飲むのは冷蔵庫にたんまりとあるビール
実はこのビールはワーホリビールなんて2つ名を付けられていて
その理由はたくさん入っているのに安く買えるから
ワーホリしている日本人が好んで買うかららしい
僕が肉を焼いている間にそんな雑談を親方は話してくれて今度、買ってみようと1人思った。
あてのステーキはお礼に調理させてくださいと僕がお願いした
出来るのは塩コショウを振るくらいだけど親方は「いいよ」と3つ返事をしてくれた
焼き終えた肉を皿に盛りつけ、テーブルまで運ぶ
炊き立てのご飯を添えてdinnerの完成だ
お互いの片手には缶ビールを持って
「今日もお疲れ様でした。」
「おう、おつかれ。」
プシュ...!っと2人のビール泡が弾けた
続けてカチっと
アルミとアルミの音がぶつかる軽い音と乾杯の音が鳴った
ゴクゴクゴク...
「うん。相変わらず不味いな。」
心の声が漏れた?いや、僕は言ってないぞ?
「ん、不味いって言いました?」
親方に尋ねた
「言ったぞ。不味いやろ?」
僕のセリフじゃなく親方のセリフだった。
「美味しいから買っているんじゃないんですか?」
「ちゃうよ。美味しいビールなら他にあるわい。」
何故だ?どうして不味いビールを買っている?そう質問するまえに親方は...
「この不味さが癖になるんじゃ、足の臭い匂いとか臭いのに嗅いでしまうやろ?」
僕は納得してしまった。
「たしかに、最初好きじゃなかった歌を聞いていくうちに好きになる。みたいな感じですよね」
「え、それは知らん」
クソッ 謎な敗北感に包まれた
「どうせ飲むなら不味いけど美味しいよりふつうに美味しいビール飲みたくないんですか?」
「そうなんよなー」
親方も同感らしい。
「どうして美味しいのを買わないんですか?」
ワーホリしている僕とは違い、親方はお金を持っているはず
なぜなら、親方はオークランドに、日本でいう東京の真ん中に一軒家を建てているのだから
「おぬしも呑むやろ?それなら安いのでええわ」
クソッ! 謎な敗北感が次は包み込んできた
こんなくだらない談笑をしながらビールを口に運ぶ
2人ともビールに軽く酔わさた、次の話は今まで話さなかった初対面の時の話へ
「最初、こんな若造に仕事勤まるのかと
ちゃんと考えてから採用すればよかったのう。と後悔してまった」
なんて笑って言う。
「まだ20代にもなってないぺーぺーで...初めてのリフォームの仕事だったんですけど
僕、どうでした?」
自分が出来る仕事は限られていて、親方の仕事を減らせたかなとずっと思っていた。
「全然ダメやったわ、出来る仕事が少なすぎる。」
親方の言うことはごもっともだ。
せめて一人前にはなりたかったなと思っている中、親方は話を続けた
「でも一生懸命やった。頑張っとった。どっか行ってまうのは少し寂しいなぁ」
親方...
ビールのせいで口元と思考だけではなく目元も緩くなってきた、目頭が熱い。
「どうせなら可愛い女の子にそうやって言われたかったです」
僕は笑って冗談を言う。
「ぬかせ、次は可愛い女の子を採用して、やっぱ辞めなければ良かったと後悔させてやるわ」
親方も笑って冗談を言った。
このセリフを聞いて僕は一応
「本当に可愛い子入ったら戻ってきます」とだけ親方に言っておいた。




